自然体験学習のフィールドで記録され続けている定点連日写真と常時録音を用いた教材を用いて、気候変動学習と自然体験との間にある時空間スケールの差異を省察的に繋ぐ一連の学習プログラムを実施した。 昨年度と同様に、7月下旬に定点連日写真と常時録音が実施されている信州大学志賀自然教育園において、茨城県の中学生24名を対象に自然体験学習プログラムを実施した。この24名を5つのグループに分け、各グループ1名ずつにウェアラブルカメラとGPS受信機を装着して、その生徒を中心に自然体験活動中の各生徒の行動データを記録した。また、12月には、7月下旬に実施した自然体験活動の参加生徒23名を含む同校第3学年の生徒約100名に対し、志賀自然教育園で記録されている定点連日写真と常時録音を用いた教材を用いた授業を行った。 平成28年度から29年度にかけての一連の取り組みにより、次の成果が得られた。①生徒は志賀高原における自然体験学習の経験有無にかかわらず、志賀自然教育園で記録されている定点連日写真を用いた植物の開葉フェノロジー観察を行うことができ、気候変動学習の教材としての有用性が確認された。②志賀高原における自然体験学習に参加した生徒は、当時の録音を聴取することで体験当時には得られなかった気付きを新たに得ることができ、気候変動学習と自然体験とを省察的に繋ぐ教材としての録音データの有用性が示唆された。 志賀高原における自然体験学習への参加有無が、気候変動学習における生徒の反応にどのような影響を及ぼすかについては、検討すべき課題として残されている。今後、自然体験時の生徒の行動データをどのように取得すべきかについての再検討、および気候変動学習における生徒の反応をどのように評価すべきかについての再検討なども含め、量的データを主軸とした分析を進めていく計画である。
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