本年度は,(1)バーチャルチューターを用いた英語スピーキング自学自習の効果として,スピーキングにおいて一度に処理できるようになった文章の構造を明らかにし,(2)バーチャルチューターによる英語スピーキング自学自習を対面活動と組み合わせることで学習効果がどのように変化するか,(3)(1)と(2)の結果を踏まえてバーチャルチューターが英語スピーキング活動に対して担える役割を明らかにし学習デザインを確立することを目的とした. (1)については,基礎的な構造からより複雑な構造の文章をチャンク化してスピーキング出来るようになったことが明らかとなった.具体的には,SVCやSVOといった基本的な構造から,Aを加えたSVCAやSVOAといった構造をチャンク化してスピーキングが行えるようになった.これは,バーチャルチューターとの事前練習によって概念化や語彙の取り出しと行った部分の認知負荷が軽減され,その結果統語処理に焦点化することが促されたことによるものと思われる.(2)については,バーチャルチューターとの英語スピーキング自学自習を対面活動と組み合わせることで,学習者は自分がスピーキングでスムーズに使用できる表現と,知ってはいるがすぐに使用できない表現を結びつける振り返り活動を行うことが可能となり,その結果,スピーキングする際に,不定詞や動名詞,関係詞や原因・結果を示す接続詞などを活用しつつ,言いたい内容を表現する際に自分が知っている表現を模索し使う方略を使用するようになったことが示唆された.(3)については,バーチャルチューターは学習者が現在知っている単語・表現を把握し,それにあったレベルの1問1答練習を提供することで,スピーキングにおける統語処理に焦点化することを促し,学習者の既習事項活用を支援することが可能であることが示唆された.
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