本研究は全国学力・学習状況調査結果と思考スキル活用能力の関係を明らかにすることを目的とした。 先行研究や各地での実践から得られた知見をもとに,思考スキル活用能力を「思考スキルの実行能力」と「思考スキル活用に対するメタ認知」の2つから捉えることとした。「思考スキル実行能力」は思考スキル実行を求める評価問題を作成し評価し,「思考スキル活用に対するメタ認知」は該当の思考スキルをどの程度活用したと認識しているかを5件法にて回答を求める形で評価を行った。これらの2つの回答を「思考スキル活用能力」として定義した。 また,全国学力・学習状況調査結果は,学習状況調査結果を除外し,学力調査問題の正答率を対象とした。さらに,思考スキル活用能力の評価対象とした思考スキルの活用を求められる問題を抽出し,分析の対象とした。 以上,2つの指標を収集し,それらの関連についてパス解析を実施した結果,学力調査結果と思考スキル活用能力の関連を明らかにすることができた。 研究の対象とした3つの思考スキルについては,どの思考スキルに対しても「思考スキルの実行能力」よりも「思考スキル活用に対するメタ認知」が学力調査結果により強い影響を与えていることが明らかになった。 この結果をもとにして,思考スキルを文脈から切り離して習得,活用できることよりも,その思考スキルを様々な場面でたくさん活用したと自覚していることの方が重要であることが明らかになり,思考スキル指導に関する重要な知見となると考えられる。
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