研究課題/領域番号 |
16K16331
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
近藤 伸彦 首都大学東京, 大学教育センター, 准教授 (10534612)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ラーニングアナリティクス / 機械学習 / 教学IR / 教育工学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、学生一人ひとりに応じた学習(修学)支援を実現するための基礎技術として、機械学習手法による大学生の修学状態のモデル化について検討している。平成29年度は、平成28年度に引き続き、《課題1》有用な修学状態予測モデル構築に向けての数値的検討、《課題2》確率モデルによる修学状態推移プロセスのモデル化についての数値的検討を進めるとともに、《課題3》実際の学習支援への適用についての検討へ取りかかることとしていた。 この当初計画にもとづき、購入機器や専用ソフトウェアを用いて研究を遂行した。《課題1》に関しては、個人属性や出席状況、成績といった従来的な情報のみによる修学状態予測だけでなく、より粒度の細かいLMS(学習管理システム)のログデータを用いた予測モデル構築を提案し、さまざまな機械学習手法の比較によりその性能を検証した。その結果、用いるデータがログデータのみであっても、成績の予測に関して一定の性能を持つことが確認された。《課題2》《課題3》に関しては、ベイジアンネットワークを持いた修学状態推移プロセスのモデリングについて、実際の学習支援への適用を念頭においたフレームワークを提案し、原著論文にまとめた。また、各教育機関においてそれぞれの文脈にあわせた予測モデル構築を教学IRの観点から個々に行うことが必要であるという考えから、教学IRにおける予測モデル構築の支援ツールの枠組みを提案し、制作の準備に取りかかっている。 全体を通して、国内学会で4件の発表、国際会議で1件の発表、査読付き論文1本の掲載を行うことができた。また、文献調査や、ラーニングアナリティクスに関する国際会議(LAK)への参加により、関連分野のサーベイを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画においては、平成28年度に引き続き数値的検討を進めるとともに、実際の学習支援への適用についての検討へ取りかかることとしていた。 数値的検討においては、とくにLMS(学習管理システム)のログデータを用いた予測モデル構築についてさまざまな機械学習手法の比較によりその性能を検証し、成績の予測に関して一定の性能を持つことを確認することができた。 また、数値的検討に加え、学習支援への適用については、ベイジアンネットワークを持いた修学状態推移プロセスのモデリングのためのフレームワークについて、数値的検証をふまえて原著論文にまとめることができた。 さらに、研究活動やサーベイ・学会参加等をふまえて実際の学習支援への適用について検討するなかで、学習支援や教学IRにおいて予測モデルを用いる場合に、各教育機関においてそれぞれの文脈にあわせた予測モデル構築を個々に検討するという方向性を提起する考えに至り、教学IRにおける汎用的な予測モデル構築の支援ツールを制作するという展開にもつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、さらに適当な数値的検討をふまえて、さまざまな粒度の教学データをあわせた修学状態予測についてまとめるとともに、教学IRや学習支援に用いるための汎用的な予測モデル構築の支援ツールの制作とその形成的評価などを通して、機械学習による修学状態予測とその実運用についての成果をまとめる。
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