本研究課題では、学生一人ひとりに応じた学習(修学)支援を実現するための基礎技術として、機械学習手法による大学生の修学状態のモデル化について検討している。2018年度は、2017年度に引き続き、さらなる数値的検討をふまえて、さまざまな粒度の教学データをあわせた修学状態予測についてまとめるとともに、教学IRや学習支援に用いるための汎用的な予測モデル構築の支援ツールの制作とその形成的評価などを通して、機械学習による修学状態予測とその実運用についての成果をまとめるものとしていた。 この当初計画にもとづき、購入機器や専用ソフトウェアを用いて研究を遂行した。まず、前年度までに提案していたベイジアンネットワークによる修学状態推移プロセスのモデリング手法を実応用することを想定し、より粒度の細かいLMS(学習管理システム)のログデータを用いたモデル構築を提案し、数値実験によりその性能を検証した。その結果は研究発表を行ったうえで、現在原著論文として投稿中である。また、教学IRやラーニングアナリティクスなど教育における先進的なデータ利活用について、システムと計算知能の観点から論点整理を行った。さらに、これまでと異なる機関におけるデータを扱った大規模な数値実験を行い、従来のような「高リスク学生の予測」だけでなく、ハイパフォーマーの予測を含めた汎用的な予測モデル構築について数値的に検討した。 全体を通して、国内学会で4件の発表、国際会議で2件の発表、査読付き論文1本の掲載を行うことができた。また、文献調査や、ラーニングアナリティクスに関する国際会議(LAK)への参加により、関連分野のサーベイを行うことができた。
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