研究課題/領域番号 |
16K16333
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高島 響子 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (10735749)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ELSI / データ共有 / 家族性疾患 / ヒトゲノム |
研究実績の概要 |
家系研究における患者及び家系員への倫理的配慮、並びに次世代シークエンス時代の多施設共同研究・疾患登録を伴う家族性疾患研究における新たな倫理的課題の論点整理を行うために、文献研究を行った。特に、家族性疾患において、患者及び家系員のゲノムデータが、データベースやレポジトリを通じて国内外の他の研究機関等と共有される際の倫理的懸念について検討した。 その結果、研究者コミュニティの中では世界的に、研究データの共有の重要性と必要性が認められている現状があり、ゲノムデータに関しても1996年のBermuda Principles以来、オープンサイエンスのためのルール作りが行われてきたことが明らかとなった。近年では、2013年に開始されたGlobal Alliance for Genomics and Health(GA4GH)が、臨床及びゲノムデータの効果的で責任ある共有を通じて人類の健康促進に貢献するとの目的の下、国際的なデータ共有を進めるため、"Framework for Responsible Sharing of Genomic and Health-Related Data"を策定した。 他方、研究データの共有においては、研究参加者(患者、データ提供者)のプライバシー保護、データ管理のセキュリティ、研究参加者の意思の尊重が倫理的な懸念事項に挙げられた。これらへの対応として従来より重視されてきた匿名化は、データのトレーサビリティの必要性という研究者のニーズ、並びに、同意撤回の実施可能性やアクセスサビリティの確保という研究参加者の保護の両面から、その在り方に変容が求められていることが明らかとなった。しかし、家系員のデータを合わせて共有することのリスクについては先行研究では十分に指摘されていなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の遂行に必要な文献を収集し検討ができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き文献研究による論点整理を継続するとともに、日本の一般市民における「家族性」や「遺伝性」に関する認識や、研究で得られたゲノムデータの共有に関する意識調査を実施し、一般市民における理解や期待・懸念を明らかにする。また、家系員のゲノムデータが重要な研究として、家族性疾患だけでなく、希少疾患が挙げられ、希少疾患の領域ではAMEDの未診断疾患イニシアチブ(IRUD)によるデータ共有のプラットフォームが構築されている。したがって、対象を希少疾患に拡大して検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会への参加を一つ取りやめたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
H29年度に実施を予定している調査において、より規模を大きくし多くの対象者数が確保できるよう、調査費用に追加して使用する。
|