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2017 年度 実施状況報告書

18・19世紀の被膜児伝説からみた産科医療の向上と生命観-日本とイギリス

研究課題

研究課題/領域番号 16K16334
研究機関大阪大学

研究代表者

内野 花  大阪大学, COデザインセンター, 招へい教員 (20586820)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード被膜児伝説 / 新生児ケア / 民間伝承 / 医療文化 / 生命観 / 比較文化
研究実績の概要

平成29年度は、国内では東京・三重・兵庫の3都県で、イギリスではアバディーン・グラスゴー・エディンバラ・ロンドンの4都市で、被膜児伝説や新生児医療文化、産科習俗についての聞き取り調査や関連事象の文物調査をおこなった。また、平成29年9月には、ポーランド・ワルシャワで開催された第43国際薬史学会大会において、18・19世紀の江戸時代の文献に記載された、被膜児に限らずすべての新生児の将来の健康を祈念して与えられた薬湯について、その薬効や社会受容、他国との比較の観点から、“Makuri- a Decoction for a Newborn Baby in Japan Yedo Period-”と題したポスター発表をおこなった。現在、発表内容を中心に、18・19世紀に至るまでの平安期以降の新生児投薬の状況をふまえて、論文を加筆修正している。
調査地では、博物館や資料館・薬草園(植物園)・図書館、宗教施設等に収蔵されている産科医療や産科習俗に関連する文物やその詳細についての調査、および産科習俗や被膜児伝説・伝統的な新生児医療に関する聞き取り調査をおこなった。残念ながら、スコットランドでは伝承そのものがすでに絶えており、かつ、当該地の歴史として知られている魔女狩りや宗教改革についての文化を観光資源としてスコットランドが推奨しているためか、他の文化や資料が駆逐されてしまっており、日本でも入手可能な文献以外は前年度同様、イングランド地方にわずかに残されているだけだった。国内では、当該地の古老たちが亡くなっていること、また調査内容が性風俗に関するため、聞き取り調査を拒否されることも多かったため、文献調査を中心におこない、文献の記載内容を確認する形で聞き取り調査をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

日本・イギリスともに、社会経済状況が激変したここ50年前後で被膜児伝説をはじめとする周産期習俗に関する文物が逸失し、伝承も断絶しているため、前年度同様、聞き取り調査は周産期習俗についてのみおこない、文献資料で補完する方法をとった。また、研究の補完として、文献資料に頼るだけではなく、新生児医療そのものにも目を向け、18・19世紀の人々がどのように新生児そのものを捉えていたのかについても研究している。
今年度は、薬種を研究の中心視点と据えていたため、薬剤師や薬史学会の研究者に薬効や類似薬種などについてアドバイスを求め、多角的視点を保った。
イギリスの被膜児伝説の伝承断絶と目した第1次世界大戦時の新技術としてのライフベストについては、次年度以降も引き続き、港湾地域を中心に検証していく予定である。

今後の研究の推進方策

平成30年度の調査実施予定地は、イギリスはロンドン周辺およびウェールズ(可能であれば北アイルランドを含む)の港湾地域を中心に、国内は北海道および中部地方などである。
イギリスでは、第1次世界大戦時のライフベストの発達による思想変化の実証もおこないたいため港湾地域は元・軍港を中心に、他地域とは異なった文化を持つウェールズ地方では資料館を中心に調査を検討している。国内では、アイヌ文化や異形児伝説が現存している地域や資料館を中心に調査をおこなう予定である。
今年度は、当研究の最終年度であるため、国内では科学史学会、国外では国際医学史学会で、それぞれ研究成果の発表を予定している。また、次年度以降の新たな研究につなげられるよう、被膜児のみならず新生児をも含めた資料調査をおこなう予定である。

次年度使用額が生じた理由

購入予定だった書籍の入荷が予定よりも大幅に遅れ、決済が次年度(平成30年度)でおこなうことになったため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Makuri- a Decoction for a Newborn Baby in Japan Yedo Period2018

    • 著者名/発表者名
      Hanna Uchino
    • 学会等名
      The 43rd International Congress for the History ofPharmacy (第43回国際薬史学会大会)
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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