研究課題/領域番号 |
16K16334
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内野 花 大阪大学, COデザインセンター, 招へい教員 (20586820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 被膜児伝説 / 妊産婦および新生児ケア / 民間信仰 / 医療文化 / 生命観 / 比較文化 |
研究実績の概要 |
平成30年5月、第65回日本科学史学会年会において「江戸時代における新生児への投薬」と題して、昨年度後半期以降の研究成果である江戸から昭和初期にかけての新生児への投薬について、胎毒概念と投薬の相関性および民間信仰による医療への影響という観点から述べた。また、同年9月にはポルトガル・リスボンで開催された第46回国際医学史学会大会において、"Culture Related to the Maternity Sash for Expectant Women in Japan"と題して、妊娠5か月前後から出産までの間、妊婦が着用する日本独自の腹帯文化について、その着用意義や着用方法の変遷を述べるとともに、医学書およびスペイン・ポルトガルからの宣教師の記述、民間医療報告書を媒介に、ひとびとの思想変化を明らかにした。 当年度は、文献資料を中心に、日本の江戸時代およびイギリスのビクトリア朝の産科習俗や妊産婦の概念、民間医療、民間信仰を精査した。しかし、やはり近代医療の興隆以来、産科習俗や民間信仰は、両国ともに減少、または軽視されており、記述そのものが非常に少なく、前時代の資料と比較すると、文言の改変または削除が見受けられる。さらに、日本に限って言うと、習俗そのものが継続していても、その意義が時代の社会文化に沿うように改変されており、人々の思想および社会文化に新たな影響を与えていることを確認した。 また、羊膜であるが、武具の保護機能が低かった時代において、羊膜の保護機能が強調された過程を確認できたので、現在、その過程を文献資料を中心に追っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同居の実母の病状が悪化し、介護が必要となった。本課題研究者が他業務から帰宅後、介護を担当しているため、出張ができず、研究実施年度を1年延長(平成30年度終了予定を平成31年度終了に変更)した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の調査実施は、イギリスはロンドン周辺およびイングランドおよびウェールズ、スコットランドの沿岸部・港湾地域を中心に、国内は、主に北海道アイヌ文化地域を予定している。 イギリスでは、平成30年度に引き続き、第1次世界大戦時のライフベストの発達による思想変化の実証も行うため、沿岸・港湾地域は元・軍港を中心に、ウェールズでは宗教関連の資料館を中心に調査を検討している。国内では、被膜児とシャーマンの関係が報告されているアイヌ文化圏や資料館を中心に調査を行う予定である。また、武具の保護機能の低さと羊膜への信仰の相関性についても、引き続き、文献資料を中心に、検証していく。 今年度は本研究の最終年にあたるため、論文での研究成果発表を予定している。また、次年度以降の新たな次の研究につなげられるよう、被膜児のみならず、新生児および妊産婦をも含めた周産期文化および投薬文化に関する資料調査もおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
同居の実母の病状が悪化し、介護が必要となった。本課題研究者が他業務から帰宅後の介護を担当しており、平成30年度内の長期出張が難しかったため、研究期間を1年延長、平成31年度中に出張時期を変更したため、次年度使用額が発生した。 なお、助成金は、イギリスおよび北海道への調査旅費、および英文論文執筆時の校正費として計上する予定である。
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