計画最終年度であるH30年度は、これまでの研究結果を踏まえた口頭発表/論文・書籍執筆を行った。特に研究結果の集大成として、単著The role of mathematics in evolutionary theoryを執筆し、Cambridge University Pressに受理された。これはCambridge elementsのシリーズとして今年中に出版される予定である。 同著作の中での中心的テーマは、進化の数理モデルと帰納推論/予測の関係である。とりわけ、進化モデルの予測能力はそのモデルが想定するところの因果モデルの構造的な不変性に依拠することを明らかにすることで、初年度より扱ってきた因果構造としての存在論が、進化論における帰納推論の礎、すなわちその認識論的な基盤となっていることを示すことができた。 また、この本に含まれる内容を元に11月には台湾の陽明大学のワークショップにて招待講演を行った。 前年度に着想された生物種に関する理論については、11月にシアトルで開かれたPhilosophy of Science Associationにて発表を行った。発表原稿は若干の訂正を加えた後、同学会誌への採択が決定し、この冬の号で出版予定である。 一方、本研究の主目標の一つである群論を用いた構造存在論による定式化については、明示的な解には至っていない。しかしながら年度後半においてこの点においても有望な着想を得ることができたため、この点については新規研究課題のもとで引き続き研究を進めていく予定である。
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