群青顔料または真鍮泥による「焼け」の劣化現象について「緑青焼け」と比較すると、群青顔料使用では、変色およびセルロース分子量低下が緩やかに進行した。また、真鍮泥使用では、いずれの劣化現象も、緑青顔料よりも早く進行した。一方、変色の経時変化と、セルロースの分子量経時変化では、異なる挙動を示し、変色とセルロースの分子量低下を伴う劣化は、異なる機構で進行することが示唆された。 緑青顔料の水溶性銅イオン量は、粒度、顔料の種類、また媒材である膠の性質に依存し、銅イオン量と緑青焼けの促進程度には、強い相関があったことから、性質の異なる膠を選択することで、焼けの影響を制御できる可能性を見出した。
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