研究課題/領域番号 |
16K16344
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
大坪 奏 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 非常勤学芸員 (40598041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細密画 / 自然史標本 / 菌類 |
研究実績の概要 |
2018年度は主に、1)標本画データベース構築(本公開)のためのデジタルデータの整備と、2)自然史博物館における標本画の保管手法の検討のための調査を行った。 1)については、初年度に当館収蔵の菌類標本画及び関連資料(今関六也菌類細密画コレクション)の一部のデータを整備し、試験的にデータベースを公開しているところだが、研究最終年のデータベース本公開に向けて今年度も資料の画像スキャン及びメタデータの作成(データの再整理を含む)を引き続き進め、約700点の標本画の高解像度デジタル画像とそれに含まれる複数の図約2000点のメタデータを作成した(標本画は紙に貼付された複数の図で構成されている)。また博物館デジタルアーカイブの外部研修に参加し、資料のデジタル化と公開についての知見を収集した。対象となる資料群の全点デジタル化はまだ完了していないが、データベースの基盤となる中心的なデータについては画像とデータが整備された。 2)については、他の博物館への訪問調査やアーカイブ関連の学会参加、文献調査などを通して、紙資料の収蔵管理の望ましい条件や課題について把握を行った。神奈川県立歴史博物館では改修した最新の空調設備による管理の状況を見学し、紙資料の温湿度管理だけでなく、未整理の資料群の整理手法についてもレクチャーを受けることで、標本画とともに収蔵される多様な紙資料の扱いについて知見を得た。当館で現在運用している収蔵環境(温湿度)管理の現状についても継続して調査し、自然史博物館で標本画(絵画資料)を収蔵する際の温湿度管理について検討を行い報告した。 また、標本画に関する勉強会を開き、標本画を扱う博物館等の学芸員・研究者からの事例紹介による情報収集や、自然科学における標本画の位置づけについて意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当館収蔵の標本画のデジタル画像とメタデータの作成についてはおおむね順調に進展しているが、予定されているデータベースの本公開に当たっては、現在分類学的見地からデータを検討し補足データを整備する必要がある。また、画像とメタデータを統合しデータベース化する作業にもなお多くの時間を要すると考えられる。 標本画の保管手法の検討については、今年度までの調査により温湿度や燻蒸等に関する知見が収集され、一部の実態も明らかになったことから、おおむね完了したと考えているが、標本画を収蔵する自然科学系施設の共通課題の抽出までは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
標本画のデジタル画像とメタデータの作成について引き続き作業を進めるとともに、入力データ(種名等)の現在の分類学的見地からの検討を行う。データベースの作成と公開にあたっては、まず当館の収蔵データ管理システム内での整備を進め、標本画の元になった標本の所在情報などの補足データを加え、研究最終年には本公開へ進める。 標本画の保管手法の検討については、当館以外に標本画を所蔵している博物館や大学施設等への聞き取り調査を行い、管理にあたっての共通課題の抽出を行う。 また、最終年には標本画を用いた展示(実践的に検討)を計画しているため、その際に用いる資料(写真や模型)の収集もあわせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他施設の訪問調査では国内遠隔地への宿泊出張を複数件予定していたが、他の業務の関係で実施を見送ったことから旅費の使用額が少なかった。 また、画像処理用のパソコンの購入を予定していたが、従来保有している機器で画像処理作業の流れを検討してから機種を選定することにしたため当年度は購入しなかった。
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