研究課題
タイプ標本は、動植物学・古生物学分野において種を定義する基礎的資料であり、学術的に重要である。しかしながら、タイプ標本の保管は、各収蔵施設に依存しているため、人員やシステム管理が不十分な施設では、標本が行方不明になるケースがある。また、標本の閲覧も容易ではない。本研究は、古生物のタイプ標本の写真撮影および3D スキャンを行うことで、タイプ標本の3D データベースを構築し、他の古生物の標本データベースとのネットワーク化を目指す。また、タイプ標本の管理方法の改善も試みるものである。研究代表者の以前の科研費研究「古生物タイプ標本における3Dデジタルアーカイブの構築に関する研究」(平成24~26年度)において、日本産の白亜紀アンモナイトのタイプ標本(ホロタイプおよびレクトタイプ、ネオタイプ)の225点の写真および3Dデータを取得している。しかしながら、取得した写真や3Dデータの加工処理に時間がかかり、インターネット上での公開が遅れていた。そのため、本研究の初年度(平成28年度)は、主にデータの画像処理と、データウェーブサイトのリニューアルを中心に作業を進めた。具体的には、画像処理が完了した写真データ約200点と3Dデータ22点をリニューアルしたウェーブサイト(http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/tsujino/3d_typespecimen_renewal/index.html)に公開した。また、公的機関以外が所蔵先になっているタイプ標本について、関係者への聞き取りを行い、その保管状態についての調査を行った。さらに将来の古生物標本データベースのネットワーク化に向けて、国内古生物標本の横断検索システムの構築を進めている東京大学総合研究博物館の研究者と協議を行った。
3: やや遅れている
平成28年度に博物館業務である大型展覧会を担当したため、本研究の実施が主に本年度の後半からになった。そのため、本研究は、やや遅れている。
国内産の白亜紀アンモナイトのタイプ標本の約3割を収蔵している九州大学、およびその他の公的機関に訪問し、タイプ標本の写真撮影および3Dスキャニングを実施する予定である。同時に、個人や企業所有になっているタイプ標本の探索も行う。取得した写真および3Dデータについては、画像処理を行った後、随時、インターネット上で公開する予定である。ICタグを用いた標本管理については、タイプ標本を管理している研究機関との十分な協議が必要であり、現在運用中のデータウェーブサイトを活用したQRコードによる管理方法も検討している。
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Palaeography, Paleoclimatology, Palaeoecology
巻: 454 ページ: 12-19
http://dx.doi.org/10.1016/j.palaeo.2016.03.021