研究課題
石英中に極微量存在する宇宙線生成核種炭素14を検出するための高感度で迅速な加速器質量分析法を確立すること、モレーン岩石に炭素14を用いる表面照射年代法を適応させて氷河地形編年を行うことが本研究の目的である。平成28年度は、筑波大学の6MVタンデム加速器とガスイオン源を用いて、二酸化炭素に精製した試料から直接炭素14を高感度で迅速に測定する手法の開発を進めた。合わせて、表面照射年代法に用いられる他の宇宙線生成核種(ベリリウム10・アルミニウム26)の測定開発も実施した。試料は、長野県中央アルプスにある氷河地形にて試験的に表面照射年代測定用のモレーン岩石を採取した。国内初となるガスイオン源を用いて迅速な炭素14測定が可能となった。ガスイオン源による炭素14測定結果は、IAEA-C7で49.11±0.57 pMC(percent modern carbon)、及びNIST-HOxIIで132.14±1.14 pMCとなり、誤差内で推奨値と一致した。NIST-HOxIIの測定誤差は0.6%であり、従来の固体イオン源の測定誤差(0.3%)より高かった。IAEA-C1の炭素14濃度は、0.48±0.05 pMC(炭素14年代: 42,900年)であり、固体イオン源のバックグラウンド(0.09±0.01 pMC、炭素14年代: 55,950年)と比べて高かった。自動前処理システムを併用した場合、10試料程度の二酸化炭素について、前処理(燃焼、二酸化炭素精製・封管)から炭素14測定まで2-3日間で終了できた。ガスイオン源は固体イオン源に比べて測定誤差とバックグラウンドがやや高いが、少なくとも0.5-1 mgCの二酸化炭素試料について炭素14の迅速測定を可能にした。加えて、ベリリウム10・アルミニウム26の高感度測定が可能となった。結果の一部を学会や研究会で発表し、報告書にまとめた。
2: おおむね順調に進展している
筑波大学の6MVタンデム加速器を用いて、表面照射年代法に必要な炭素14、ベリリウム10、及びアルミニウム26の高感度測定が可能となり、結果の一部を報告書にまとめた。前処理に必要な石英中炭素14抽出手法の開発にやや遅れが認められるが、他機関の石英中炭素14抽出装置も使用しながら前処理を進める事ができる。
平成29年度は、主に試料前処理に必要な石英中炭素14抽出装置の開発を進め、モレーン岩石中の炭素14測定を実施する。研究成果の一部を国際学会にて発表を行い、国際誌への投稿を予定している。
平成28年度は、石英中炭素14抽出装置の開発にやや遅れが認められた為、次年度使用額が生じた。
石英中炭素14抽出装置の開発に関連する物品費に使用する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
第29回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集
巻: - ページ: 19-22
巻: - ページ: 150-153
第13回日本加速器学会年会プロシーディングス
巻: - ページ: 1111-1114
UTTAC ANNUAL REPORT 2015
巻: - ページ: 15-16
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http://www.tac.tsukuba.ac.jp/~ams/