研究課題
フィンランド中部の主要都市ラハティ近郊にあるベシ湖において、広範囲より複数のコア試料を採取し分析を行った。年縞の有無の分布や堆積構造の変化とともに、過去数百年間の人為汚染による湖沼生態系の変化を珪藻群集から明らかにした。分析結果では、同じ湖で行われた先行研究とは異なる珪藻群集変動が見られ、同じ湖盆内でも都市や農地からの栄養流入減からの距離に応じて、局所的な藻類の増減が見られることが判明した。これは地域全体の水質の変遷の指標としては1本のコア試料では十分に代用できず、複数のコア試料が必要であることを示唆していた。東部に位置するレへミランピ湖について、湖盆全体から採取した30本以上の短いコア試料について、珪藻群集と年縞の有無、分布などの分析結果が論文掲載された。この研究では年縞の形成過程において、人為汚染による栄養度の変化よりも気候変化がより大きな影響を与えていることが示唆された。最北部にあるケボ湖のコア試料について、昨年度に引き続き、追加の炭素年代測定や年縞の計数を行い、分析結果が発表された。河川の氾濫によって形成された分厚い年縞を持つ試料で、計数の結果過去約5百年の試料であることがわかった。年縞の計数による年代モデルを基に、小氷期や中世の気候変動や、周辺域の人為開発の影響を明らかにした。また中北部のクニンカイセン湖における分析結果について口頭発表を行った。ここでは気候変動の復元に加え、地域による地質の違いも、珪藻の気候変動に対する応答や、年縞の堆積過程に影響を与えることが示された。各地の試料でみられる年縞も、周辺環境の違いでその構成物や珪藻種、堆積過程は様々であることから、これまで行ったフィンランドの年縞堆積物の研究について、主に珪藻化石の堆積の観点からレビューした論文を共著で発表した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
環境考古学と富士山
巻: 4 ページ: 53-63
Quaternary
巻: 2 ページ: -
10.3390/quat2020020