本研究では、日本における長期的な降・積雪量変動と、近年の豪雪の増加について、その地域性を明らかにすることを目的とした。日本海側の雪が平均的に減少している一方で、最近、冬季にはたびたび、豪雪の増加が報道されるが、実際に豪雪は増えているのだろうか? 気象庁の気象官署データを用いて、過去51年間の雪の長期変動を調べた。特に、降雪変動に影響が大きいと考えられる、「降水日に対する降雪日の割合R(s/p)」、「総降水量」に着目して解析した。その結果、地球温暖化や自然変動に起因する日本周辺での気温変動により、R(s/p)が日本海側のほぼ全域で統計的に有意に減少していた。一方で、降水量変動によって、降雪量の長期変動が複雑になり、減少が見られない地域もあった。具体的には、北陸では、降水量の長期減少により、降雪の減少が顕著に見え、東北の一部では、R(s/p)が減少しているにも関わらず降水量の長期増加により、降雪が減少していない。また、過去上位10位の豪雪イベントの発生時期解析した結果、豪雪の増加は今のところほとんどの地域で現れていなかった。これは、自然科学の観点では、雪が多く降るようなイベントは、最近特別に増えた訳ではないことを示している。一方で、人文・社会科学的な観点では、少子高齢化や過疎化により、豪雪の影響は大きくなっているのかもしれない。今後は、豪雪という用語の定義などを含めてさらなる研究が必要であり、より学際的な研究も必要だと思われる。
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