研究課題
自然災害の多い日本では,災害時の事業継続性の向上が喫緊の課題である.災害時の医療の継続性を高めるには,関連組織の連携が不可欠であり,地域単位での事業継続マネジメントシステム(以下,地域BCMS)の構築が急務である.地域BCMSを実装するには,関連組織の職員に地域BCMSの教育をすべきであるが,その教育項目は明らかでない.本研究では,災害時の医療の継続のために,関連組織が地域的な連携で果たすべき機能を明らかにし,それを基盤として,地域BCMSの導入・推進に必要な教育項目を導出することを目的とする.平成30年度は,これまでに導出した教育項目一覧表(以下,一覧表)の有効性を確認するため,(1)熊本地震の事例に基づく検証,(2)川口市周辺地域の関連組織で,一覧表を活用した教育の実施を行った.(1)は,重要な教育項目の抜け漏れが生じていないかを確認するため,まず,熊本地震で中心的な役割を果たした5 病院の医療従事者にインタビュー調査し,災害対応活動の問題点を明らかにした.それらを防止できる教育項目が含まれているかという視点で一覧表を確認した結果,37個の問題点のうち,34個は含まれていた.残り3個にも対応できるよう,一覧表を改善した.(2)は,一覧表により有効な教育の実施が可能であることを確認するため,川口市のA病院で災害対策本部演習を実施した.本演習は,大規模地震発生を想定し,発生直後の状況を受講者に付与し,それに基づき対策本部としての判断を下す.演習前に,一覧表を用いて前提知識の教育を企画,実施した結果,適切に状況判断ができるようになることを確認した.さらに,川口市周辺地域の医療機関を対象に事業継続計画セミナーも実施した.こちらは一覧表を用いて内容を決定したわけではないが,受講者アンケートから不足していたと思われる教育内容を抽出し,それらが一覧表に含まれていることを確認した.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Total Quality Science
巻: Vol.4, No.2 ページ: 92-98
https://doi.org/10.17929/tqs.4.92