プレート境界地震での震源近傍における堆積盆地の強震動予測の高精度化を目的に,インドプレートとユーラシアプレートの衝突帯で発生した2015年ネパール・ゴルカ地震の震源断層近傍に位置するカトマンズ盆地で観測された長周期地震動を対象とし,その生成メカニズムの解明を行った.最終年度は主に以下の項目を実施した. 前年度の検討において,岩盤観測点で観測された長時間幅パルス地震動は,最近傍のすべり域からの近地項・中間項に大きく影響を受けたものであることを明らかにした.本年度はまず,強震観測点直下の一次元速度構造に基づき,堆積層上の強震観測点に対してシミュレーションを実施した.主要動部は概ね再現でき,岩盤観測点で観測された長時間幅パルス地震動が堆積盆地に入力することで増幅され,破壊力のある長周期地震動が生成されたことを明らかにした.また,水平動の後続部分は再現性が低く,直下の構造のみならず,3次元的な盆地効果を考慮する必要があることがわかった. 一次元速度構造と既往の地質情報などから,カトマンズ盆地の3次元速度構造モデルを構築した.2015年ネパール・ゴルカ地震の最大余震の3次元強震動シミュレーションから,堆積層が厚い地点で地震動が大きく増幅するのみならず,カトマンズ盆地の複雑な基盤形状が影響し,盆地周縁部で局所的に高振幅となることを明らかにした.その強震動空間分布は,過去の大地震の被害分布とも調和的である. これまでの検討より,カトマンズ盆地の強震動評価においては,地盤増幅特性を適切に評価することが重要性であることが示された.2015年ネパール・ゴルカ地震の余震群に対して,既往の地震動予測式を適用した場合,岩盤サイトでは観測値と予測値が一致するもの,堆積層上の観測点では地盤の卓越周期付近で過大評価となる.そこで,地盤増幅特性を取り込んだ応答スペクトルの単点サイト予測式を構築した.
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