研究課題
本質噴出物と変質噴出物とを識別する目的のため、マグマ噴火噴出物、マグマ水蒸気爆発噴出物、水蒸気爆発噴出物、関連する火山地熱変質帯の熱水変質鉱物粒子の形態学的特徴等を実体顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等を使用して確認した。その後、偏光顕微鏡、金属反射顕微鏡、粉末X線回折装置(XRD)、X線マイクロアナライザー(EPMA)等を用いて構成物の同定と局所化学組成の特徴の把握を行った。さらに、これらの火山噴出物中に含まれる、分析可能な大きさの銅硫化鉱物の銅同位体比に関しては、多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を使用して測定を実施した。昨年度の課題であった地熱変質帯に産する自然硫黄の産状や組成を把握するため、神奈川県箱根山大涌谷地熱変質帯の溶融自然硫黄溜りを有する噴気孔の周囲に分布する球形、楕円形、不規則形の中実自然硫黄試料を分析・解析した。これらの球状硫黄の色の差異は、主に内部に含まれる異質な鉱物の種類や量に起因することが明らかとなった。このタイプの自然硫黄の形状は、火山湖等の周囲にみられる中空球状硫黄と異なる。水蒸気爆発噴出物に含まれる、燃焼の影響がみられない様々な形状の固体溶融硫黄粒子は、この様な地熱変質帯由来であると考えられる。マグマ噴火噴出物に含まれる銅硫化鉱物の銅同位体比は、一般的なマグマ(火成岩)の示す銅同位体比と類似する。一方、マグマ水蒸気爆発噴出物や水蒸気爆発噴出物に含まれる銅硫化鉱物の銅同位体比は、一般的なマグマ(火成岩)の示す銅同位体比とは異なり、熱水や天水の影響を受けて同位体比が変化したことを示唆するため、本質噴出物と変質噴出物とを識別する指標になり得ると考えられる。
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