研究課題/領域番号 |
16K16382
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研究機関 | 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター) |
研究代表者 |
土志田 正二 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), その他部局等, 研究員(移行) (20526909)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2次崩壊現象 / 崩壊発生危険度評価 / 地形解析 / LiDAR / ドローン |
研究実績の概要 |
降雨により発生した斜面崩壊や土石流などの斜面災害現場において,安全な探索・救助活動を行うためには,2次崩壊の危険性を考慮する必要がある。しかし最も救助活動が必要とされる災害初動期においては,安全対策を行うための十分な情報を得ることが難しく,現場の感覚に基づいて救助活動を行ってきた事例がほとんどである。本研究では過去発生した2次崩壊による被害事例を収集し,その特徴について類型化及び発生メカニズムの解明を行い,災害初動期に考慮すべき情報について明確にすることを目的としている。また斜面災害発生直後(2次崩壊発生前)の地形情報を収集する方法,及びその地形情報を用いた迅速な2次災害発生危険度を評価する方法の考案も行う。 平成28年度は,災害発生時の外的誘因(降雨データ)の情報収集・整理及び現地調査による災害発生現場の内的要因(地形・地質情報)の取得を行った。具体的には,繁藤災害(昭和47年7月豪雨)や,2004年長野県岡谷市で発生した土石流災害(平成18年7月豪雨),2014年広島豪雨により広島市で発生した土砂災害(平成26年8月豪雨)などである。特に2014年広島豪雨災害において2次崩壊による人的被害が発生した崩壊(広島市安佐北区可部東の崩壊)を対象として,野外調査並びに災害後に取得された航空レーザ測量データ(LiDAR)を用いた微地形解析を行い,その2次崩壊現象について詳細な考察を行った(平成28年度砂防学会で発表)。また崩壊が群発した広島市安佐南区の崩壊現場においては,その崩壊中流域を対象にドローンを用いた空撮を行い,地形情報を取得し,解析を行っている。また本地形解析を行うと同時に,空撮情報から地形情報作成するための手法の簡易化・マニュアル作成を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では,災害発生時の外的誘因(降雨データ)の情報収集・整理及び現地調査による災害発生現場の内的要因(地形・地質情報)の取得を行うこと,また斜面崩壊の形状・分布把握のための空撮技術の簡易化・マニュアル作成及び空撮画像を用いた地形情報の作成を行うことを目的としていた。本内容はおおむね順調に進展している。また災害直後のLiDARデータなど微地形データが入手できたことにより,想定より詳細な地形解析を行うことができている。 研究計画段階では,あらかじめ想定していた研究候補地以外にも可能な限り増やしていく予定ではあったが,個々の災害事例内で整理する必要のある事象が多かったため,計画内に挙げた研究候補地に絞り研究を進めている。追加候補地における現地調査は平成29年度以降行う予定である。 空撮画像を用いた地形情報の作成・運用に関しては,昨年末に発売された新しいドローン(Mavic PRO[DJI])を入手した。これに伴いドローンの運用方法も含めて再整理を行い,より実践的な空撮による地形データ作成技術の簡易化・マニュアル作成を行っている。しかし,現在使用している解析ソフトウェア・現地調査装備は一部で古くなっているため,平成29年度以降に新しく購入する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は2次崩壊現象の特徴の類型化,発生メカニズムの解明を主な研究目的とする。昨年度と同様に文献調査,現地調査及び分析,GIS処理を行う。収集した2次崩壊現象の各種情報を整理し,2次崩壊現象における発生時の降雨情報,地形・地質情報の特徴を類型化する(1次崩壊発生から2次崩壊発生までの経過時間などの時間的要素も含める)。類型化を行うと共に,2次崩壊現象の発生過程を明らかにし,その発生メカニズムの解明を行う。類型化・発生メカニズムの解明を踏まえて,災害初動期において2次崩壊現象に対する安全対策のために必要となる情報を明確にする。その情報は,災害初動期でも取得可能な情報である必要があるため,情報の入手可能となる時間(災害発生からの経過時間)についても整理し,今後の2次崩壊対策のための基礎情報とする。 平成30年度は地形情報を用いた迅速な2次崩壊発生危険度評価手法の構築を主な研究目的とする。前年に引き続き,年度前半まで文献調査,現地調査及び分析,GIS処理,情報分析・GIS分析を行う。現地調査は前年度までの情報収集の結果,もしくは前年度までに調査した災害現場で十分に調査しきれなかった地域を選定し行う。得られた情報を基に,迅速な2次災害発生危険度評価手法の構築を試みる。想定として,傾斜・曲率等の地形解析のほか,谷・尾根の形状及び発達程度などを用いた評価手法を考えている。これらの解析処理にはGISソフトを用いる。以上の処理については,災害発生後6時間以内に完了できる処理速度を想定している(可能であれば空撮画像取得後3時間以内が理想である)。研究計画通りに,2次崩壊現象の特徴の類型化・発生メカニズムの解明,及び迅速な2次災害発生危険度評価手法の構築ができれば,得られた成果を国内外の学会で発表,論文作成を行い,さらに議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は2016年4月熊本地震に関する災害派遣及び研究・調査(本科研費外)が多く入ったため,計画していた野外調査の回数を減らしたことが理由の一つである。また購入予定であった物品(ドローン及び解析ソフトウェア,現地調査用資機材)に関して,平成29年度以降により性能が良いものが発売されるという情報が入ったため,購入を一時保留したことも理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
一時保留にしていた物品(ドローン及び解析ソフトウェア,現地調査用資機材)を購入する。また野外調査を追加して行う予定であり,その出張費並び現地の地形・地質データ・リモートセンシングデータ等の購入を行う。
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