研究課題
重症心不全および呼吸不全の患者に対して、遠心血液ポンプや人工肺で患者の心肺機能を補助する体外機械的補助循環治療(PCPS,ECMO,VAD)が行われる。この治療において懸念される重篤な合併症のひとつは血栓塞栓症であり、それを回避するために抗凝固療法が行われるが、過剰な抗凝固療法は逆に出血合併症の原因となる。遠心血液ポンプ内は血栓の好発部位の一つであるが、この部位における血栓をモニタリングする手法は存在しなかった。我々は前年度までに実験目的に見合った特殊なポンプと分光光度計を内蔵するHyperspectralカメラを用いて血栓と全血の境界を画像化することに成功した。その際に血栓と全血の光学特性の違いを利用して血栓センシングが可能であること、光学特性にはヘモグロビン含有量が大きな影響を与えていることを突き止めた。これらの研究成果に関しては現在特許申請中である。(血液凝固識別装置、特願2016-033977)本研究では更にその技術を応用して、市販化されている遠心ポンプの血栓センサの開発に従事した。初年度に取り組んだことは、ジャイロ型遠心ポンプの上部ピボットの血栓形成を観測するために、分光光度計を始めとした計測機器類を購入し、解析のためのソフトウェア開発をプログラム作成会社に委託した。作成した血栓検出装置にてブタ血液を用いた模擬回路実験を行ったところ、上部ピボットに血栓が出来た時の光学的変化を捉えることが可能であった。次年度にはこの計測装置を用いた動物実験を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
計測機器の購入や解析のためのソフトウェアの開発が予定通りに進み、血栓検出装置の開発が終了した。模擬回路実験にて計測機器にて血栓検出が可能であることを確認した。今年度の時間と予算は計画書通り動物実験に充てることが可能である。
動物実験で、かなりの精度でポンプ内血栓を検出できるシステムの開発に成功した場合は、今後は臨床での実用化を目指す。その際には、この血栓センサがポンプ販売企業に対して少なからず影響を与える可能性がある。それ故現時点から、企業とどのような形で製品化を進めるかを検討しているところである。また現在のシステムは実験装置という概観であるため、臨床研究も視野に入れた病院内で使用可能な機器の開発も進めていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Artificial Organs
巻: 41 ページ: 印刷中
10.1111/aor.12862
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Journal of Biorheology
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