研究課題/領域番号 |
16K16385
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
阿部 誠 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90604637)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光電容積脈波 / 血圧 / 重回帰モデル |
研究実績の概要 |
平成28年度は,緑色光電容積脈波センサの多点計測による血圧の絶対値を推定するモデルの構築を行った. まず最初に,緑色光電容積脈波センサの計測部位の安定性を検証した.前研究課題で製作したセンサや取得したデータを利用することで,指尖,手首,前腕,上腕において,安定した計測が可能であることを確認した. さらに,指尖,手首,前腕,上腕の各部位において緑色光による光電容積脈波計測し,それぞれの部位における脈波信号の波形から11個の特徴量を算出した.そして,各部位から求めた計44個の特徴量を説明変数,平均血圧を目的変数とした重回帰モデルを作成する方法の有効性を検証した. 被験者20名を対象とした実験データから,脈波波形における特徴量に基づいて作成した重回帰モデルを用いて,血圧の推定を行った.その結果,実測血圧と推定血圧の間の相関係数が0.9以上となる被験者が見られるほど,高精度での推定が可能であることが示された.加えて,特徴量の個数を半分以下の21個に減らした場合においても,相関係数0.8以上の推定精度が保たれることが確認された.ただし,本研究における推定精度は相関係数による評価であり,推定値が血圧変動の値に近いかどうかの評価である点に注意が必要である. 以上の結果から,緑色光電容積脈波センサの計測の安定性を生かした複数部位による計測によって,高精度で血圧変動の推定が可能になったと推察される.今後は,血圧の絶対値としての推定精度を向上させ,長時間の計測においても推定精度が維持できる手法への改良が必要であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では血圧推定に用いる光電容積脈波センサの計測部位について有用な結果が得られることを確認した.加えて,当該年度の目標であった血圧推定のための数学的モデルを構築し,血圧の実測値と強い相関関係となる推定値が得られることを確認した. 本研究のように,複数の計測部位における,緑色光による光電容積脈波信号の特徴量を用いた血圧推定法が検討された先行研究はなく,本研究の成果は新規性がある.そのため,本成果について随時学会等で発表を行っており,さらには学術論文等での報告が可能な状況にある.以上のことから,本研究は当初の計画に沿った形で進捗していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,平成28年度の研究結果をもとに,当初の計画どおりに実施していく.具体的には,平成29年度では,平成28年度に提案したモデルの実用性を向上させるために,絶対値の推定も可能にするモデルや個人差を考慮した汎用的なモデルを構築する予定である.さらに,長時間計測した場合においても,推定モデルが大きく変化しないような工夫を加える必要があると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,当初計画していた解析用ソフトウェアの購入において,より安価な構成において研究が実施可能となったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
血圧推定システムの構築に必要な経費として,平成29年度請求額とあわせて使用する予定である.
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