研究課題
生体内組織形成術を利用した、世界最小径(内径:0.6mm)の人工血管"マイクロバイオチューブ"作成して、ラットの大腿動脈へ移植し、その生着性及び開存性を評価した。マイクロバイオチューブは鋳型をラットの皮下に2ヶ月間埋没させた後、周囲の結合組織ごと鋳型を摘出して、余剰組織をトリミングすることで作成した。これをラットの両側大腿動脈(内径:0.5mm)に移植して、12ヶ月間観察した。7T-MRAによる開存性の評価は3ヶ月ごとに行った。12ヶ月後に一部の移植片を取り出し、病理組織学的所見の評価を行った。移植後1ヶ月後の時点では、12例(75%)の開存が得られていた。その12例は全例で12ヶ月後までの開存が得られており、MRAでの血管描出所見にも変化はなかった。またその大部分で、12ヶ月後のMRA所見では吻合部が特定困難となるほど、自己化が進んでいた。2例で吻合部に瘤形成が確認されたが、いずれも経過観察中に徐々に縮小していた。移植後12ヶ月でのマイクロバイオチューブの病理組織学的所見では、母血管同様の層構造が完全に再構築されており、またその内腔は、再生された血管内皮細胞で完全に覆われていた。その他、マイクロバイオチューブ壁内に、顕著な炎症細胞の浸潤や、明らかな石灰化も認めなかった。本研究結果から、マイクロバイオチューブの移植後長期間における、高い生着性、安定性及び、耐用性が確認された。近い将来マイクロバイオチューブは、切断指の再接着といった微小血管手術領域において、有用なgraftになり得るものと確信している。
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European Journal of Vascular and Endovascular Surgery
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10.1016/j.ejvs.2018.03.011