研究課題/領域番号 |
16K16396
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
齋藤 淳史 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (30714539)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気刺激 / 脳・神経 / 細胞・組織 / リアルタイム計測 / 光ファイバー |
研究実績の概要 |
本研究では,磁気刺激による生体応答を実験動物の脳からリアルタイムで検出できる計測システムを構築し,磁界による刺激作用のメカニズムや閾値を調べることを目標としている。 計画2年目となる平成29年度は,動物脳内へのファイバープローブの固定と神経刺激応答の検出に向けた要素技術の開発に取り組んだ。加えて,必要な磁気刺激強度を探索するために,実験動物の脳より採取した培養神経回路網を用いた強磁界ばく露実験を実施した。上記の各実施項目について,以下の成果を得た。 (1)動物脳内へのファイバープローブの固定と神経刺激応答の検出に向けた要素技術の開発 時間変化する強磁界中で発熱や振動が生じない非導電性カニューレを製作し,手術によりラットの大脳皮質体性感覚野に移植した。雌雄各2匹を対象とした実験の結果,長期飼育環境において手術に伴う有害な影響が生じておらず,ファイバープローブを安定して固定できることを確認した。また,強磁界中で覚醒状態のラットの頭部を定位置に固定できる非導電性固定器具および動物磁気刺激用小型8の字コイルの製作を完了した。一方,ファイバープローブとカルシウム蛍光指示薬を用いて脳内神経活動の光学計測を試みたものの,後肢への物理的刺激に対する神経刺激応答の検出には至らなかった。 (2)培養神経回路網を用いた磁気刺激強度の探索 ラットの脳より採取した神経細胞を微小電極アレイ基板上に播種し,強磁界ばく露(50 Hz,最大400 mT)による培養神経回路網の発火パターンへの影響を調べた。磁界強度を50 mTから400 mTまで段階的に変化させ,磁界ばく露前後での同期発火頻度を比較した結果,400 mTの磁界強度では同期発火頻度が有意に増加することがわかった。また,数値ドシメトリにより磁界強度と誘導電界強度の関係を調べることで,神経刺激応答を誘起するために必要なばく露条件を選定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた動物脳内へのファイバープローブの固定方法の確立と非導電性固定器具および動物磁気刺激用小型8の字コイルの製作を予定通り完了することができた。動物脳内における神経活動の計測実験に関しては更なる条件検討の必要性が生じたものの,培養神経回路網を用いた磁気刺激強度の選定を先行して完了することができた。 上記成果の一部は,学術論文等により公知化しており,全体として研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,課題として残った動物脳内における神経活動の計測実験に関して,カルシウム蛍光指示薬の導入方法に焦点を当てた条件検討を行う。また同時に,ファイバープローブ刺入部位における神経細胞集団の状態を確認するため,針状のマイクロ電極を用いた電気計測を実施し,最適な計測条件を決定する。これらの検討状況を踏まえ,磁気刺激時の動物脳内における神経刺激応答をリアルタイムで検出できる評価技術を確立する。
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