研究課題
本研究では,磁気刺激による生体応答を実験動物の脳からリアルタイムで検出できる計測システムを構築し,磁界による刺激作用のメカニズムや閾値を調べることを目標としている。計画最終年度となる平成30年度は,実験動物へ磁気刺激を印加した際の刺激誘発応答を脳深部の神経活動を指標として評価する実験に取り組んだ。上記の実施項目について,以下の成果を得た。(1)ラット脊髄を対象とした生体内磁気刺激応答のリアルタイム検出方法の確立前年度までに製作した動物磁気刺激用小型8の字コイルを用いて,ラットの脊髄を磁気刺激した際の誘発応答を末梢神経と脳・中枢神経からリアルタイムかつ同時に検出できる計測手法を確立した。具体的には,坐骨神経の細胞体が存在する脊髄・腰椎部に8の字コイルの交点を配置し,磁気刺激直後に後肢の坐骨神経線維近傍に伝搬する運動誘発電位(MEP)および大脳皮質1次体性感覚野より検出される体性感覚誘発電位(SEP)を同時記録することに成功した。なお,SEPの検出については光ファイバーを用いたファイバーフォトメトリー法と針状のシリコンプローブ電極を用いた細胞外電位記録法の2種類を検討し,本研究では高い時間分解能での神経活動の記録が行えた細胞外電位記録法をSEPの検出手法として採用した。(2)ラット脊髄磁気刺激による末梢/脳・中枢神経領域での刺激誘発応答の評価上記の評価手法を用いて,ラット脊髄・腰椎部を磁気刺激した際に検出されるMEPとSEPの特性を評価した。雌雄各4匹の成獣ラットを用いた実験の結果,磁気刺激により誘発されるSEPの伝搬時間はMEPより10倍程度遅くなり,その閾値はMEPより10倍程度低くなった。これらの結果より,脊髄・腰椎部に対する磁気刺激は,末梢神経領域に電気的な興奮を誘発しない場合でも脳・中枢神経領域には刺激に対する感覚入力を伝搬する可能性が示された。
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Integrative Biology
巻: 10 ページ: 442-449
https://doi.org/10.1039/c8ib00097b