研究課題
近年、幹細胞の移植技術の発展により、脳や脊髄などの中枢神経障害の治療に兆しが見えつつあります。しかしながら、損傷部位は、炎症が生じており、幹細胞を移植しても移植した細胞もダメージを受け、正常に機能しないことが問題となっています。本研究では、損傷部位の炎症を抑制し、移植した幹細胞が活発に活動できる高分子足場材料を構築している。本年度は、活性酸素消去機能を有するトリペプチドとポリエチレングリコール架橋剤から成るナノファイバーペプチドゲルを新規に作製した。疎水性相互作用を駆動力とする自己組織化ペプチドナノファイバーは、自己組織化直後にはゾル状態であるため、幹細胞を懸濁し、損傷部位に注射した後、紫外線照射でゲル化するように設計を行った。これまでに、L体とD体のアミノ酸からなるペプチドナノファイバーゲルに間葉系幹細胞を封入したところ、L体のペプチドナノファイバーゲル内で幹細胞はよく増殖・伸展し、分化能も増加することを明らかにした。一方、D体のペプチドナノファイバーゲル内では、増殖・進展がL体のゲルに比べると遅く、分化を抑制する性質を明かにした。また並行して、前年度から引き続き行っている誘電泳動デバイスを用いた骨髄由来間葉系幹細胞の分離を行い、同じ骨髄由来の細胞との分離に成功した。近年、骨髄由来の間葉系幹細胞は、脳梗塞や脊髄損傷などの再生医療への応用が期待されていることから、この分離技術と前述した足場材料の技術を融合した再生医療が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載した内容の成果を現在投稿中である。
今後は、L体とD体のアミノ酸からなるペプチドゲル内での幹細胞の機能(例:神経細胞分化能及び幹細胞性)等を評価する予定である。
論文執筆および追加実験を行うため、一年間延長申請を行った。そのための予算を次年度使用額とした。
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