研究課題/領域番号 |
16K16400
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西塚 隆伸 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (20725535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工血管 / 足場材料 / 新規生体吸収性材料 / PHA / 安全性試験 |
研究実績の概要 |
新規に開発した高純度 PHA に対し、ISO10993医療機器の生物学的評価シリーズに準拠した生物学的安全性評価を、「細胞毒性試験」「急性全身毒性試験」「皮下埋没試験」で行った。 細胞毒性試験:感度の高い試験法である抽出法によるコロニー形成法で行った。結果は対照材料のIC50値(相対コロニー形成数が50%となる抽出液濃度)と比較した所、IC50値が100%を超えた為、細胞毒性無しと判定した。 全身毒性試験:溶媒(生理食塩水)20mlに対し、PHA粉末を4g混ぜ、37°のインキュベーター内で3日間抽出し、遠心分離器にかけた後、その上澄み液を採取した。ラット10匹をPHA注入群と生食注入群(コントロール群)の2つにrandomに分け、尾静脈より注入した。結果は、3日間毎日、観察と体重測定を行ったが、2群の内10%以上の体重減少をきたしたラットはおらず、下痢、呼吸障害、痙攣、死亡例も存在しなかった。また注入3日後に臓器解剖を行ったが、両群ともに、視診上異常を来しているラットはおらず、病理学的検査でも、胆汁うっ滞」や「肝細胞の変性、壊死」といった所見や、「間質性腎炎」や「尿細管壊死」の所見等は、両群とも認めなかった。 皮下埋植試験:ISO10993医療機器の生物学的評価シリーズに準拠し、ラットの皮下に厚さ0.5mmで直径10mmの①PHA(N=36)、②ポリエチレン(N=12)、③PLA(N=12)のシートをそれぞれ埋植し、2週、4週、8週で殺処分後、プレパラート検体にし、炎症反応の量などを病理評価し、①PHA群と各群を比較した。結果、陰性対照群のポリエチレン群と比べPHA群は、炎症の有無、変性・壊死の有無、線維性被膜肥厚の有無において、Fisher検定で有意差を認めなかった。また、既にヒトで使用実績のあるPLA群と比べても有意差を認めず、PHAは対象群と「同等」の炎症所見と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットの大動脈血管損傷モデルの確立は行えているが、損傷血管への PHA 足場材の適用実験はまだ行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究先の三菱ガス化学にて、2017年夏に500L規模の巨大培養槽が完成し、今までの3Lと比べ、PHAの作成量が格段に増加する。これにより、提供されるPHAの量が増え、Preliminaryな実験を含めた実験が、スピードアップし行っていく事ができると考える。今後はIn vitroの実験に加え、in vivo の試験に移る。具体的には、各血管損傷ラットに、PHA による組織再生足場材(長さ 10mm、薄さ 150μm)、PGA による足場材、P3HB による足場材を適用し、血栓形成の有無、血管組織再生の程度、炎症の程度(fibloblast の数、周囲組織の厚み、マクロファージの数)、PHA の分解程度等を 定期的に評価、比較していく。
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