研究課題/領域番号 |
16K16403
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金 栄鎮 国立研究開発法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 特別研究員 (90709205)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 刺激応答材料 |
研究実績の概要 |
本提案課題では、より高効率な癌治療が可能な自己集合新規刺激応答性スマートミセルの設計と開発にその目的がある。スマート見せるを用いて、癌の治療のため化学療法(抗がん剤における治療)、遺伝子治療(RNA干渉における治療)と癌組織を構成されている癌細胞を人工的に死滅(アポトシース)させるメカニズムの3つの方法の組み合わせで治療効果を極大化させるスマートミセルの設計・開発によりをより高効率な癌治療法の開発を目指す。平成28年度には、RNA、薬物と人工的に死滅させるバイオ分子を癌組織までのデリバリーが可能な温度応答性高分子(PEOz-COOH)の合成と重合を行った。詳しくは、PEOzのモノマーである2-ethyl-2-oxazolineを開始剤としてのpotassium iodide、連鎖移動反応としての3-bromopropionateとともに有機溶媒(acetonitrile)に溶かし開環重合法で重合させた。次に、得られた高分子の温度応答性や構造分析、分子量などの評価を行った。開環重合の時間、温度などの細かい条件はまた調整中だが、それによる高分子の特性制御であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本提案課題の平成28年度の目標は温度とpHに応答する高分子の重合とスマートミセルの作製であった。スマート高分子の合成につきましては大きい問題なく進めているが、モノマーの純度が十分なのかまだ言い切れないところもある、今後モノマーの精製法について検討していく予定である。 一方で、PPEEAとPSの合成については、まだ細かい合成条件が確立できなかった。このような理由でまだスマートミセルの作製の段階まで行かずに予定よりやや遅れている。 しかし、平成29年度には問題点を乗り越え、よりスムーズに進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で用いる高分子(poly(2-ethyl-2-oxazoline)(PEOz-OH))の合成条件を細かく調整しつづ、高分子の分子量やCOOHとOHの含有率をあげることを狙い、合成された高分子の特性評価を行う。さらに、カチオン性の高分子(poly(2-aminoethyl ethylene phosphate (PPEEA))を合成するため、そのPPEEAの前駆体である2-n-(t-butoxycarbonyl)ethanolamine-2-oxo-1,3,2-dioxaphospholane)の合成を行い、PEOz-OHと触媒であるSn(Oct)2の存在下で反応させカチオン基を有するPEOz-b-PPEEA共重合体の構成を目指す。 次に、pH応答性を持つヒドラゾンリンカー(hyd)をPEOzの末端に導入する。そのため、PEOz-COOHを触媒と開始剤の存在下で開環重合を行う。さらに、COOH基をhyd基に置換させ温度とpHに応答するスマート高分子を作成する。得られた高分子に抗がん剤であるdoxorubicin(DOX)を導入する。一方で、本提案課題の新たな目標であるフォスファチジルセリン(PS)の合成を行う。PSの前駆体を2-chloro-2-oxo-1,3,2-dioxaphospholaneとn-(t-butoxycarbonyl)L-serine methyl esterを反応させ合成を行う。得られたPS前駆体はPEOz-hydを反応させ最後にPEOz-hyd-PSを合成する。 その後、得られたすべての高分子の特性分析を行い、特性評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の目標より実際の研究がやや遅れているため、 その分の消耗品(主に科学試薬)の購入も遅れている状況で予定していた平成28年度分の予算を使い切ることができなかった。特に少し高値が付いている試薬(例えばセリン誘導体など)はまだ購入を済ませていない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と平成29年度分の予算を合わせて、主に科学試薬・合成材料・細胞関連試薬や材料など研究に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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