研究課題/領域番号 |
16K16415
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
隈丸 拓 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (00511461)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 使用成績調査 / 医療機器 / 安全性 |
研究実績の概要 |
重篤な有害事象の危険性がある医療機器の承認に際しては、販売後の使用成績調査が義務付けられている。昨今、産官学の連携の下、症例レジストリーと使用成績調査の連携が開始されている。現行の制度下では、全数の登録や随時の有害事象報告が要求されることがあり、臨床現場の登録負荷が高い。市販後のデバイスの有害事象発生パターンを分析することで、その後の登録負荷の軽減が可能か、検証した。 研究実施計画に沿って、経カテーテル大動脈弁留置術用生体弁のレジストリーデータを対象に、デバイスの有害事象発生パターンの分析を行った。また、データの登録開始早期とその後に分けての有害事象発生パターンの比較を行い、後期のデータ登録において発生パターンが変化するか、検証を行った。さらに、有害事象の随時報告のタイミングを定期報告のタイミングへずらした場合のデータの集まり方の変化をシミュレートした。 このデバイスにおいて、術後1年以内の重篤な有害事象は過半数が術後30日以内に発生していた。使用成績調査対象の市販後早期の症例と後期の症例における有害事象報告の発生の仕方は大きな違いは認めなかった。術後31日目以降に生じた有害事象については、手技やデバイスに関連したものはわずかであった。有害事象の随時報告が定期報告に集約された場合、割合は低いものの、術後31日~1年目に発生する有害事象が最大で半年程度遅れるが、特に市販後後期においてはデバイス・手技の評価への影響は小さいと考えられた。ただし、同一症例に生じる複数回のイベントを漏れなく収集する仕組み考慮する必要がある。 登録負荷の大きさは臨床現場に負担となり、結果的にレジストリーのフォローアップ率の低下などにつながる。市販後の使用成績調査における有害事象評価は短期間に集中的に行い、その後入力負荷を減らすことがレジストリーの成功には重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に沿って初年度は経カテーテル大動脈弁留置術用生体弁のレジストリーデータを対象とした分析を実施した。また市販後調査の最新の手法や研究者との議論を目的に国内・国際学会へ参加した。一方で、当該分野の登録事業に関わるメンバーとのディスカッションを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度分析対象とした経カテーテル大動脈弁留置術用生体弁レジストリーの分析結果を関連学会に報告・発表し、国際ジャーナルで出版する。 一方、発見の一般化可能性を検証するため、異なるリスクレベルのデバイスレジストリーを対象とした使用成績調査データの分析も予定している。当初予定していた他分野の血管内治療デバイスのデータ利用が困難となったため、現在異なるデバイスの使用成績調査データの使用交渉を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外、国内の2回の学会参加のための旅費が予定よりも安価で済み、また論文執筆における英文校正に費用がかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
分析を円滑によりスピーディに進めるため、分析対象のレジストリデータの整理、クリーニングなどに従事する研究補助員への謝金に利用する。
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