研究課題/領域番号 |
16K16420
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
萬井 太規 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10765514)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 視覚フィードバック / バランストレーニング / 体重心 / 足圧中心点 |
研究実績の概要 |
近年の超高齢社会において転倒予防プログラムの考案は緊要な問題である.最近の研究により,従来利用されてきた足圧中心点(COP)をリアルタイムに視覚的にフィードバックしたバランス練習では,バランス能力改善に不充分であることが明らかになってきている.本研究の目的は,新たに考案したCOPと体重心(COG)を同時にリアルタイムで視覚的にフィードバックするバランス練習の姿勢安定性への効果を調べることである.本研究により,COPとCOG同時フィードバック練習の効果を示すことができれば,転倒予防やバランス能力を改善させるための新たな理学療法介入の一助となり臨床応用に発展することが期待される. 本年度では,COPとCOGの同時フィードバック練習の静的立位安定性への効果を検証するため,健常成人を対象に,対象者をCOPフィードバック群とCOPとCOG同時フィードバック群の2群に割り当て,効果を比較した.三次元動作解析装置および床反力計を用いて,COGとCOPを算出した.その結果,COPとCOG同時フィードバック練習は,COGの動揺速度を有意に減少させ,また,COG動揺に対するCOP位置の偏りも有意に減少させることが明らかとなった.さらに,COGに対するCOP位置の偏りとCOGの動揺速度には有意な正の相関が認められた.本研究により,COPとCOGの同時フィードバック練習は,COGに対してCOPを適切に調整する能力を向上させ,重心動揺を減少させることが示された.しかしながら,この練習が,静的立位バランス以外においても効果があるのか,高齢者などのバランス能力の低下した対象に対しても効果が認められるのかは不明である.今後,適用範囲を示していく必要性が挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおりに,初年度では健常成人を対象に,足圧中心点(COP)と体重心(COG)の同時視覚フィードバックの静的立位バランスへの効果を検証することを目的として研究を行った.従来利用されているCOPのみをフィードバックする練習と,COPとCOGの同時フィードバック練習の効果を比較した結果,COPとCOG同時フィードバック練習は静的バランス能力向上に有効であることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後,動的バランスへの効果も検証し,本研究の効果の適用範囲を示していく必要性が挙げられた.そのために,研究期間2年目は,随意的な前後身体移動課題や不安定なバランスマット上での立位課題といった不安定性が高く動的バランスを必要とする課題で効果の検証を行っていく.また,床反力計から得られる体重心の仮想値(COG)では、COPと類似した動きとなり、動作中の対象の姿勢アライメントを十分に反映できないこともわかってきている。ゆえに、三次元データから算出される体重心(COM)をフィードバックするシステムの構築とその効果の検証も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
筋電図電極の増数や消耗品の購入,およびソフトウェアのヴァージョンアップを行う予定であったが,現有していた電極の修理,消耗品の補充、およびソフトウェアのヴァージョンアップが所属する研究室で賄われた.このため,計画を変更し,三次元動作システムから得られた三次元データをリアルタイムに表示するシステムの構築を行うこととし,現在業社とシステム作成を行っているが,納期に間に合わなかったため,次年度使用額が生じた.また,現在,本年で得られた研究データの学会発表や論文投稿の準備を行っている段階であり,それら発表のための旅費などが使用されずに次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は,三次元システムから得られるデータのリアルタイム表示のシステム構築の作成に充てる.また,それに伴い三次元システムの消耗品の使用が多くなることが予想され,本研究課題に必要な消耗品に充てる.さらに,研究発表や論文投稿のために海外旅費や英文校閲費に充てる.
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