研究実績の概要 |
本研究は、関節拘縮に伴う軟骨変性を予防するリハビリテーション介入方法を検討することを目的とした研究である。前年度実施された研究活動スタート支援の発展形として、ラット関節不動モデルを用いて、関節拘縮に伴う軟骨変性の病態の解析と、同モデルに対するリハビリテーション介入機器開発が実施された。 軟骨はメカニカルストレスによりその組織構造や機能を維持するため、関節拘縮下の軟骨変性においても、荷重もしくは非荷重の状態が及ぼす影響は異なると考えられる。ラット関節不動モデルにおける8週間の関節不動と再関節運動介入は、軟骨の領域ごとに異なる変性状態を有するとの報告をもとに(Nagai et al., 2016)、再関節運動介入を行った際の軟骨の変性病態について、形態学的手法、力学的手法、超微細構造観察による解析を行った。また同モデルに対するリハビリテーション介入に向けて、介入頻度や角度の調節が可能な関節可動域訓練介入装置の作成を行った。 評価領域は荷重部とその周辺部とし、力学試験より、骨軟骨複合体の硬度は荷重部より周辺部で経時的に高くなることが明らかになった。透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型顕微鏡(SEM)を用いた超微細構造観察では、荷重領域では軟骨細胞の顕著な核萎縮像が、周辺領域では細胞膜内に複数の空胞を有する軟骨細胞が複数観察され、これらは先行研究の領域特異的な嚢胞様変性像と類似していた。一方、両評価領域とも軟骨表面のコラーゲン形態は正常に近い像であることが明らかとなった。また、完成した関節可動域訓練介入装置は、現在後続研究者によって活用されている。 本研究により、関節不動後の再関節運動介入が及ぼす領域ごとに異なる軟骨変性病態は、軟骨細胞の変性に加え骨軟骨複合体硬度の相違が一因である可能性が示唆された。その一方で、同介入は軟骨表面形態には良好な影響を及ぼす可能性が示唆された。
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