筋性拘縮の主要な病態はコラーゲンの過剰増生に伴う骨格筋の線維化であることが明らかになっており,これまでの自験例から,その発生メカニズムの上流には筋核のアポトーシスを発端としたマクロファージの集積ならびにそれに伴う筋線維萎縮の発生が関与することが予想されている.つまり,このメカニズムを踏まえると,筋性拘縮を予防するためには筋線維萎縮の発生を抑制できる介入戦略が不可欠といえ,電気刺激療法は骨格筋に筋収縮運動が誘発できることから,有効な介入戦略になると推測される.そこで,本研究ではラット足関節を2週間底屈位で不動化することで惹起されるヒラメ筋の筋性拘縮に対する電気刺激療法を用いた筋収縮運動の効果を検討した.その結果,不動処置のみの群(不動群)と不動の過程で電気刺激療法による筋収縮運動を負荷した群(電気刺激群)の足関節背屈可動域と筋線維横断面積は対照群より有意に低値であったが,この2群間では電気刺激群が不動群より有意に高値であった.また,電気刺激群の筋核数は不動群よりも有意に高値で,対照群との有意差を認めなかった.さらに,電気刺激群のマクロファージ数や線維化関連分子のmRNA発現量,コラーゲン含有量は不動群よりも有意に低値であり,対照群との有意差を認めなかった.以上のことから,電気刺激療法による筋収縮運動には筋線維萎縮と線維化の発生を抑制する効果があり,このことが足関節背屈可動域制限の進行抑制効果につながったと推察される.つまり,電気刺激療法による筋収縮運動は筋性拘縮の予防戦略として有用であることが示唆された.
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