平成28年度に引き続き、一次運動野に対するtACS介入が運動学習能力の向上効果に及ぼす影響について、健常被験者60名の脳磁図データ解析を行った。特に、本年度はtACSによる運動学習能力の変化と脳律動変化との関連性に焦点を当てて解析を実施した。 これまでの解析結果から、特定の交流刺激を大脳一次運動野に加えることで、系列反応時間課題(ボタン押し反応課題)の反応速度が速くなる、すなわち運動学習の能力が向上することが明らかとなった。また、脳磁図データに対する関心領域(ROI)解析の結果、tACSによる一次運動野刺激後には同部位のbeta帯域のパワーが増加することが明らかとなり、更にそのパワー値と運動学習能力との間に有意な相関関係があることが示された。一方、Phase Locking Valueを用いた全脳ネットワーク解析の結果、tACS介入に伴う脳内ネットワークの有意な変化は認められなかった。このことから、一次運動野をターゲットとした1mAでのtACSが脳内のネットワークに及ぼす影響は低く、局所の脳機能のみを変調させている可能性が示唆された。 以上の解析結果について文献的考察を行ったところ、tACSによる交流刺激が一次運動野における興奮性および抑制性神経細胞の興奮性変化に影響を与えることによって運動学習能力が向上していると考えられた。本研究成果は、欧文誌への論文投稿を目指して現在準備を進めている段階である。
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