研究課題/領域番号 |
16K16432
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
岩本 えりか 札幌医科大学, 保健医療学部, 助教 (40632782)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 月経周期 / 動脈スティフネス / 総頸動脈 / 内頸動脈 / 外頸動脈 / 女性 |
研究実績の概要 |
動脈は構造によって,弾性繊維の多い「弾性動脈」や,血管平滑筋の多い「筋性動脈」などに分類されるが,この動脈の構造も動脈硬化の進行に関与している.例えば,脳循環に重要な総頚動脈(弾性動脈)と内頚動脈(筋性動脈)では,年齢や性周期などが動脈硬化に与える影響が異なる可能性がある.そのため,全身的な動脈硬化だけではなく,局所的な動脈硬化の評価および介入効果の検証が必要である.本年度では、動脈壁の構造の違いが月経周期中の動脈スティフネス(動脈の硬さ)の変化に与える影響を明らかにすることとした。エストロゲンは血管平滑筋細胞に作用するため,弾性動脈と比較して血管平滑筋細胞を多く有する筋性動脈の方が,月経周期中に起こるエストロゲン濃度の変化に大きく影響されるという仮説を立てた.
対象は月経周期が安定している健康な若年女性9名とした.月経周期における3期(月経期,排卵期,黄体期)において動脈壁の構造が異なる頸動脈(内頸動脈,総頸動脈,外頸動脈)のそれぞれの動脈スティフネスとba-PWV(動脈スティフネス),循環指標(上腕動脈血圧,心拍数,頸動脈血圧,自律神経活動)を測定した.
その結果、内頸動脈のみ月経期と比較して排卵期において有意にヤング率(動脈スティフネスの指標)が低値を示したが,総頸動脈,外頸動脈,ba-PWVは月経周期中に有意な変化が認められなかった. また,循環諸量においても全て月経周期中に有意な変化が認められなかった. 結論として、頸動脈において,動脈壁の構造が異なる動脈間では,月経周期中の動脈スティフネスの変化も異なる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、剪断波エラストグラフィを用いて,若年女性の月経周期中の動脈弾性率の変化が弾性動脈と筋性動脈で異なるかを明らかにした.
初期の計画では,若年者だけでなく高齢者との比較も行う予定であったが,エラストグラフィの解析方法の確立に時間を要したため、本年度は若年者のみとした.今までは超音波画像をマニュアルで解析していたため,解析に大幅な時間を要していたが,ソフト使用により解析時間を短縮することが可能と考えられる.そのため,解析方法確立のために,やや実験開始が遅れていたが,解析時間の短縮により現在の進行状況においても計画実施に問題はないと考える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では温熱刺激およびストレッチによって動脈弾性率が変化するか,また動脈弾性率の変化に周辺組織の弾性率の変化が関係するかを明らかにすることとしているが,本年度予備実験を行ったところ,個人差が大きく有意な変化は認められなかった.そのため、介入方法について再考し,実施することとする.一方、吸入ガスを変化させることで血管を拡張させ,その際の拡張度合いから血管の機能を検討する先行研究が今年発表されたため,先行研究の解析方法や介入方法を取り入れつつ,研究を進めて行く予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度は本来若年女性の性周期のみならず高齢者においても検討を行う予定であったが,研究の解析に必要なソフトの開発に時間を要したため,当初立案していた実験計画に遅延が生じた.そのため,当年度に実施予定であった高齢者に関する実験の研究費の一部を次年度使用額として繰り越す運びとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては,高齢者に関する実験の謝金や、実験に必要な電極などの消耗品を購入するために研究費の一部を使用予定である.また,本研究課題に関する研究打ち合わせや研究成果の発表に伴い,印刷費、英文校正費用、投稿料などが必要となる.そのため,上記に挙げたこれらの項目に研究費を充当する予定である.
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