研究実績の概要 |
前十字靭帯(anterior cruciate ligament: ACL)損傷に対して自家腱移植術が施行されるが、術後のリハビリテーションおよび競技復帰に関する客観的な指標は存在しない。移植腱が生着するためには移植腱への血流の再開が重要であり、MRIを用いて移植腱の血流と組織学的な生着について評価することを目的とした。SDラット(12週齢)を用いて動物腱移植モデルを作成した。大腿骨顆間部にラット用リーマーで骨孔を作製し、遊離アキレス腱を移植腱として骨孔に挿入した。移植腱の固定のために骨孔掘削時に採取した円柱状の骨片を挿入した。Agilent社製動物用横置き型MRI system,7.04Tを使用し、手術後1か月で造影MRIを撮像したところ、骨孔内全体に造影効果が得られた。その後犠牲死として、ホルマリン固定した。関節内の肉眼的所見として明らかな関節炎を認めなかった。骨孔に並行に作製した組織切片による組織学的検討では大腿骨における移植腱挿入部は線維性組織で被覆されており、骨孔と移植腱が組織学的に癒合傾向を認めた。 組織切片を骨孔に平行に作製し、hematoxylin eosin染色で組織学的評価を行った。移植腱の骨化は全群ともに認めなかった。骨組織と移植腱由来のコラーゲン線維を確認した。すべての群で骨孔と移植腱が組織学的に癒合傾向を認めた。 組織学的評価に時間を要したため、次年度以降には免疫染色を用いた瘢痕組織やコラーゲン線維の評価、血流再開のためのCD34免疫染色を行う予定である。
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