研究課題/領域番号 |
16K16439
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
下重 里江 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (10433624)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波発声 / 快情動 / ドーパミン / セロトニン / オピオイド / 触刺激 / マイクロダイアリシス / ラット |
研究実績の概要 |
快情動発現には側坐核ドーパミン放出増加が関与する。触刺激によって申請者は側坐核ドーパミン放出が増加することを明らかにした。ラットは快情動状態にあるときに超音波を発声する。本研究では触刺激によって快情動発現を起こす脳内メカニズムを解明するために、初めにラットに触刺激を行い、快情動超音波発声がみられるかを調べた。続いて、触刺激時の快情動超音波発声を起こす脳内神経機序を明らかにすることを試みた。その結果、触刺激によって快情動超音波発声が起こることが分かり、脳内ドーパミン、セロトニン、オピオイド受容体が超音波発声に関わることを示した。 実験には成熟ラットを用い、触刺激を行ったときのラット超音波発声を記録した。ラット超音波発声は超音波の基本周波数帯域によって22 kHz超音波発声と50 kHz超音波発声とに区別され、前者は不快情動の指標、後者は快情動の指標となる。50 kHz超音波発声の超音波画像(ソノグラム)は情動の状態によっていくつかのサブタイプに分けられている。触刺激によって22 kHz超音波発声はみられず、50 kHz超音波発声が顕著に増加した。本研究で用いた触刺激によっても側坐核ドーパミン放出が顕著に増加することをマイクロダイアリシス実験より確認した。オピオイド受容体遮断薬、セロトニン受容体遮断薬を側坐核内に投与すると触刺激時のドーパミン放出増加が抑制された。さらに、側坐核内にドーパミン受容体遮断薬を投与して触刺激を行った際に50 kH超音波発声が減少することを明らかにした。よって、触刺激時の50 kHz超音波発声には側坐核ドーパミン放出が関与し、さらに側坐核内のセロトニン、オピオイド受容体が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の予定通りにほぼ順調に進行している.予定していたとおり,平成28年度には触刺激によって50 kHz帯域の超音波発声(快情動超音波発声)が発現することを確認した.平成29年度にはその脳内メカニズムを検討する実験を行い,脳内オピオイドの関与を明らかにした.今年度は予定していた側坐核内ドーパミン放出の関与について検討する実験を行った.
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今後の研究の推進方策 |
過去3年間の研究をまとめて論文に投稿するとともに、国際学会で発表する。本研究で用いた触刺激は、これまでに報告されている触刺激よりも非常に多くの快情動超音波発声を出す特徴がある。さらに、他の研究報告で類を見ない特徴的な超音波発声のサブタイプを出すことも明らかになっている。そこで、今後はこの触刺激が快情動の中でもどのような意味を持つ情動状態を作り出しているのかを明らかにする必要がある。さらに、本研究で用いた触刺激に特徴的な超音波発声のサブタイプが意味する情動状態を行動実験で確認していく必要がある。さらに、触刺激によって情動関連脳部位の形態学的変化がみられるかを組織学的に明らかにする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に論文校閲費を支出する必要が生じたため。
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