本研究は若年健常者と肩関節疾患者に対し,良姿勢の構築と腹横筋などのコアマッスルも強化できる抗力を具備した継ぎ手を有する体幹訓練機器Trunk Solution(以下TS)の使用の有無で,その効果を評価し,肩関節への治療だけでなく機能・構造不全の予防などの臨床応用を目指すものである.2016年度~2017年度までに評価システムの構築および健常者を対象とした計測を実施したが,研究代表者の勤務地の変更などによって,研究が遅れ,より質の高い研究成果を報告するために2018年度まで研究実施期間を延長した. 肩峰下接触動態の計測には超音波診断装置を使用し,また肩甲骨の三次元的な動きの計測には三次元動作解析装置VICONを用いた.2018年度中に9名9肩の若年健常者と7名7肩の肩関節疾患者をTSの使用の有無による肩関節外転運動における肩峰下接触動態の変化や肩甲骨の三次元的な動きへの影響を検証するため,データの統計学的な解析を行うことができた. 結果として若年健常者ではTSの使用の有無に関わらず肩甲骨の三次元的な動きに有意な差はみられなかったが,肩関節疾患者ではTSを使用することで肩甲骨の上方回旋角度が有意に大きくなり,さらには肩峰下接触動態も若年健常者のパターンに類似する結果となった.これらの結果は,肩関節疾患者においてTSを使用することで肩関節の運動が健常者に近づき,機能・構造不全を予防することに有用であることを示唆している.
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