研究課題
本研究は、慢性心不全の急性増悪で入院した患者において、吸気筋トレーニングによる呼吸筋力の向上が運動耐容能を改善するか否か検討することを目的として行われている。これまで、我々は、心臓リハビリテーションを実施した慢性心不全患者を対象に、リハビリテーションの頻度が多いほど吸気筋力が向上すること、このリハビリテーション後の吸気筋力の向上が運動耐容能の改善に寄与することを明らかにしてきた。また、慢性心不全患者における吸気筋力の低下の臨床的意義についても研究を進め、2018年度には吸気筋力が低い患者ほど運動中に息切れを生じやすいということを息切れの客観的な指標である換気効率を用いて明らかにし、これらの結果が英文誌へ掲載された。2019年度には、慢性心不全患者における吸気筋力の低下と予後との関係について、近年増加している左室駆出率の保たれた患者を対象に検討した結果、左室駆出率の低下した患者と同様に吸気筋力の低下が予後不良と関連していることを明らかにし、これらの結果も英文誌に掲載された。さらに、リハビリテーションによる吸気筋力の変化と予後との関係を検討した結果、吸気筋力がより向上すると再入院や全死亡といった臨床的イベントの発生率が低下することを明らかにし、2019年度の国際学会で、Nursing and Allied Health Profession Investigator Awards を受賞した。すなわち、我々が研究期間に明らかにしたことは、①慢性心不全患者において吸気筋力の低下は臨床的に重要なアウトカムと関連すること、②吸気筋力の向上はこれらのアウトカムを改善する可能性があることである。現在、吸気筋に特化したリハビリテーションである吸気筋トレーニングが入院期心不全患者においても有効かつ安全な介入手段となるか否かについて、無作為化比較試験によって明らかにしていくため、患者の取り込みを開始している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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