研究課題/領域番号 |
16K16444
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山田 尚基 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90756149)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳卒中後遺症 / リハビリテーション / アトモキセチン / 経頭蓋磁気刺激 |
研究実績の概要 |
本年度は脳卒中後の慢性期高次脳機能障害患者に対する、集中的なリハビリテーションとアトモキセチン併用投与の安全性、実現可能性と有効性を示した。さらに、本介入後に注意障害、記憶障害を中心に改善することがわかった。対象は両大脳半球に脳卒中の既往がある高次脳機能障害患者の2例とした。入院時からアトモキセチン投与を開始し、その後の入院期間中は毎日、リハビリテーション(120分/ 日、一対一訓練)を実施した。高次脳機能は、入院日と退院日に評価した。2例ではあるが、本治療は明らかな副作用を認めず、脳卒中後の高次脳機能障害を改善させた。 アトモキセチンは、心血管系に大きな影響を与えることなく脳内アドレナリン濃度を増加させる薬物であり、これの内服が脳の機能変化を意味する可塑性を高めることもすでに確認されている。脳卒中後遺症患者を対象としてアトモキセチンを投与し、それが神経症状の回復に与える影響を検討した報告はみられていない。よって、アトモキセチンの内服というより簡便な方法で脳の可塑性を安全に高め、リハビリテーション併用療法が行えれば、これまで治療できなかった多くの脳損傷に起因する障害の治療に貢献できるものと予想される。さらに、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、アパシー(無気力)などを呈する脳損傷後高次脳機能障害患者を対象として、経頭蓋磁気刺激(TMS)といった非侵襲性の刺激法を治療的に併用して用いたという報告は国内外のいずれにおいても例をみない。脳卒中後上肢麻痺および失語症に対するTMS治療の成績をみると、高次脳機能障害に対してもTMSが治療的に適用できる可能性が期待され、次年度ではTMS治療も併用して効果を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)アトモキセチン内服下でのリハびりテーション(以下リハ)の安全性と有用性を確認する。アトモキセチン内服投与による副作用出現の有無を随時観察し、アトモキセチンを1日40~120mg内服投与する(投与量は、1~2週間ごとに漸増するか検討)。リハ科病棟に2週間入院のうえで、リハを入院1日あたり120分に加えて・各々自主トレーニング120分を日曜を除いて毎日施行し、安全に施行できることを確認し、有用性についても治療介入前後での機能評価結果を用いて統計解析にて判定する。現状、本治療法の安全性、有効性は確認された。2)アトモキセチン内服下でのrTMSとリハ併用療法の安全性と有用性を評価する。上記に加え、入院1日あたり反復性経頭蓋磁気刺激をアトモキセチン内服下に連日2400発を日曜を除いて毎日施行し、安全に施行でき、かつ治療法として有用であるかも治療介入前後での機能評価結果を用いて統計解析にて判定する。この際、プラセボ刺激用のTMSコイルを用いてrTMS刺激有無での有意差があるかも統計解析する。これに対し、プラセボに対し有効であるかが高次脳機能患者のリクルートに難渋し実現できていない。本年度の課題である。 3)アトモキセチン内服の有無でのrTMSとリハ併用療法の効果比較を検討する。上記治療法にアトモキセンの投与群と非投与群に分けて、2群間での機能改善における効果を治療介入前後での機能評価結果を用いて統計解析にて判定する。 上記の3つが本研究の目的であるが、同時期にプラセボ薬を内服する群を設定することは治療を受けに来ている患者にはなかなか実施できない現状と直面している。
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今後の研究の推進方策 |
以下の本研究の目的である2と3について今後研究を推進していく。 2)アトモキセチン内服下でのrTMSとリハ併用療法の安全性と有用性を評価する。 安全に施行でき、かつ治療法として有用であるかを治療介入前後での機能評価結果を用いて統計解析にて判定する。この際、プラセボ刺激用のTMSコイルを用いてrTMS刺激有無での有意差があるかも統計解析する。 3)アトモキセチン内服の有無でのrTMSとリハ併用療法の効果比較を検討する。 上記治療法にアトモキセンの投与群と非投与群に分けて、2群間での機能改善における効果を治療介入前後での機能評価結果を用いて統計解析にて判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)必要な医療統計ソフトを次年度以降に購入検討することとしたため。 (使用計画)予定した研究費使用計画に合わせて、医療統計ソフト等の購入および学会発表および参加での旅費に使用する予定である。
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