研究課題
骨格筋の萎縮やミトコンドリア機能不全、インスリン抵抗性増大といった病態を呈する筋強直性ジストロフィー(DM)には、選択的スプライシング因子であるmuscleblind-like 1(MBNL1)の機能不全が関与していることが報告されている。DMの筋病変は骨格筋の加齢性変化と類似する点が多いため、骨格筋の加齢性変化にもMBNL1の機能不全が関与している可能性が示唆されるが、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。本研究は3年計画で実施され、平成29度はその2年目に該当する。本年度は骨格筋の加齢性変化におけるMBNL1の役割について10週齢(若齢)と100週齢(老齢)のC57BL/6Jマウス足底筋およびマウス由来筋芽細胞C2C12を用いて検討した。老齢マウスの体重あたりの足底筋重量およびMBNL1発現量は若齢マウスと比べ有意に低値を示した。このことから骨格筋の加齢性変化にはMBNL1の発現低下が関与していることが示唆された。次に、C2C12筋管細胞においてMBNL1発現をノックダウンし、RNAシーケンスを用いた遺伝子発現量解析を行った。MBNL1をノックダウンすることで発現が2分の1以下になった遺伝子は27個存在し、その中にはミトコンドリア生合成やミオシン重鎖発現に関与し、骨格筋の加齢性変化に関連していると考えられているPGC-1αが含まれていた。以上より、MBNL1はPGC-1α発現調節に関与し、マウス足底筋における加齢性変化に関与している事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は3年計画で実施する予定であり、2年目である平成29年度よりマウス加齢モデルを用いた検討を計画していた。加齢によって骨格筋のMBNL1発現が低下することや筋細胞においてMBNL1の発現低下が直接的に影響を及ぼす遺伝子を同定することができたことから、おおむね順調に推移していると判断している。
平成29年度の結果により、MBNL1がPGC-1α発現調節に関与し、マウス足底筋における加齢性変化に関与している事が示唆された。PGC-1αはミトコンドリア生合成などに関与していることから、今後はミトコンドリア膜電位の評価やアポトーシス関連因子に関する検討を行い、加齢によって生じる骨格筋退行性変化のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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