研究課題
骨格筋の萎縮やミトコンドリア機能不全、インスリン抵抗性増大といった病態を呈する筋強直性ジストロフィー1型(DM1)には、選択的スプライシング因子であるmuscleblind-like 1(MBNL1)の機能不全が関与していることが報告されている。DM1の筋病変は骨格筋の加齢性変化と類似する点が多いため、骨格筋の加齢性変化にもMBNL1の機能不全が関与している可能性が示唆されるが、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。本研究は3年計画で実施され、平成30年度は最終年度に該当する。前年度までの研究でMBNL1は骨格筋細胞においてミトコンドリア生合成に関わるとされるPGC-1αの発現に関与していることが明らかになった。本年度はC2C12筋管細胞とマウス加齢筋を用いてMBNL1発現低下がミトコンドリア膜電位およびミトコンドリア誘導性アポトーシスに及ぼす影響についての検討を行った。C2C12筋管細胞においてMBNL1発現をノックダウンした結果、ミトコンドリア膜の脱分極を示すJC-1 monomerで染色された細胞像の輝度およびアポトーシスの程度を示すapoptotic index、アポトーシス促進タンパクであるBax発現量は有意に高値を示した。また、マウス加齢筋においてMBNL1およびPGC-1α発現量は有意に低値を示し、対照的にBax発現量は有意に高値を示した。以上より、MBNL1機能不全はミトコンドリア機能不全やアポトーシス増加を惹起し、骨格筋の加齢性変化に関与することが示唆された。
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