腰痛者は、筋活動パターンが変化すると報告されているが、持ち上げ動作などの腰痛のリスクが高い機能的な動作での筋活動パターンは明らかとなっておらず、異常な筋活動の改善に焦点を当てた運動療法の確立には至っていない。そこで本研究の目的は、腰痛の予防、治療のために腰痛者の異常な筋活動の改善に焦点を当てた運動療法の構築を図ることであった。 平成28年度に実施した研究において、寛解期の再発性腰痛者では、持ち上げ動作時に腹横筋/内腹斜筋と腰部多裂筋の活動遅延と腰部脊柱起立筋の過剰な活動が生じ、健常者に比べ過度な負荷が腰部に加わり、更なる腰部損傷の原因となり得ることが示唆された。そこで平成29年度は腹横筋の筋活動遅延を改善させるための効果的な方法を検討するために、腹横筋の選択的収縮が得られる運動療法の検討を行った。その結果、腹部にテープメジャーを巻き腹囲の変化を被験者自身でフィードバックを行うことで腹横筋の選択的に収縮が効率よく実施できることが明らかとなった。平成30年度は、再発性腰痛者における持ち上げ動作時の異常な筋活動パターンが、腹部引き込み運動を実施することで改善し得るかを検討した。結果として、運動介入後は腹横筋/内腹斜筋と腰部多裂筋の筋活動遅延が改善し、腰部脊柱起立筋の過剰な筋活動が軽減した。この結果は腹部引き込み運動が持ち上げ動作時の異常な筋活動パターンを改善することを示し、再発性腰痛者のための運動療法として有用であることを示唆した。令和1年度(平成31年度)は、平成30年度に実施した研究成果を第56回日本リハビリテーション医学会学術集会にて成果発表し、国際雑誌に論文投稿を実施した。
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