平成30年度はラットに対する2か月間の短時間かつ高強度なインターバルトレーニング(HIIT)が、多発性脳梗塞モデルラットの認知障害を予防しうるか、モリス水迷路試験を用いて検証した.実験群は2か月間HIITを行った後に麻酔下で右内頚動脈に生理食塩水を注入したsham群(n=4)、2か月間HIITを行った後に麻酔下で右内頚動脈に塞栓物質である約50μmのマイクロスフェア(MS)を注入したMS-ex群(n=5)、2か月間安静にした後に麻酔下で右内頚動脈にMSを注入したMS-非ex群(n=4)とした。手術翌日に神経欠損症状を検討するためにロータロッド試験を行った。ロータロッド試験は、回転するロッド上でラットが走行を維持できる時間を計測するもので、脳梗塞後には走行時間が短縮することが報告されている。MS-ex群、MS-非ex群はsham群と比較して有意に走行時間が低下していたことから、MS注入によって多発性脳梗塞を作成できたことが示された。その3日後から認知機能を検討するためにモリス水迷路試験を行った。モリス水迷路試験は、プール内の決められたスタート位置からゴールまで辿り着く時間を計測し、認知機能が低下すると辿り着くまでの時間が延長すると報告されている。3群間で比較したところ、sham群とMS-ex群に比較してMS-rest群はゴールまでの時間が延長する傾向にあった(p<0.1)。 本研究の結果、平成28-29年度の実験によって2か月間のHIITは遅筋の筋重量を増大させるとともに心肺機能を向上させることが明らかになり、更に平成30年度の実験によって脳梗塞前のHIITの実施は脳梗塞後の認知機能の低下を抑制する可能性があることが明らかとなった。
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