研究課題/領域番号 |
16K16457
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市原 克則 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (50710711)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミクログリア / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
脊髄損傷後のニューロリハビリテーションの土台となる神経可塑性は神経細胞自身の機能とともに、周囲のミクログリアの機能によって制御されているため、ミクログリアによる可塑性制御メカニズムは治療ターゲットの一つとして考えられる。一方、細胞はメカニカルストレスを介してその機能を変化させるが、メカニカルストレスがミクログリアの機能に与える影響と、リハビリへの応用の可能性は明らかではない。 まず、Cas がミクログリアに発現するかを、C57BL/6Jマウスにおいて免疫染色法により評価したところ、Iba1陽性ミクログリアにおいて、Casのリン酸化を認めた。さらに脊髄損傷後のCasの発現とミクログリア活性の変化の関連を評価するために、10週齢のC57BL/6Jマウスを用いて脊髄損傷モデルを作製し、42日後(慢性期)の脊髄を用いて、免疫染色法により評価した。その結果、Iba1陽性ミクログリアにおいてさらに顕著なCasのリン酸化を認め、ミクログリア活性に対するCasの寄与が示唆された。 次に、in vitroにおいてミクログリアにおけるCasの機能を評価するために、ミクログリア培養系の構築を試みた。現在、ミクログリアの初代培養系を既存の報告に従い確立している最中である(Yip et al., JNeurosci Methods, 2009)。また、これと並行し、ミクログリアと同系統の細胞であるマクロファージの初代培養系を、既知の方法である腹腔由来マクロファージを採取する方法で確立した。 また、ミクログリアにおいてCasの発現を認めたことから、ミクログリア特異的Cas欠損マウスを作製することとした。しかし、動物飼育施設の改修等により、マウスの作製は首尾よく進んではいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標は、今後の研究推進の足掛かりを得ることであり、ミクログリアにおいてメカニカルストレス関連タンパクであるCasが発現しており、機能することが示唆され、脊髄損傷病態でその機能が変容する可能性を示すデータを得ることができた。 また、ミクログリアの初代培養系は構築中であるが、仮に困難であっても、同系統の細胞である腹腔由来マクロファージの初代培養系は確立できたことから、今後の培養系での検討は遂行可能となった。上記点はおおむね順調に進展している点である。 しかし、研究推進の懸念材料として、動物飼育施設の改修等により、ミクログリア特異的Cas欠損マウスの作製が首尾よく進んでいないことが挙げられる。このことから、おおむね順調に進展している点も多く挙げられるが、研究の進捗状況としては、全体としてはやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷および損傷後の運動によるリハビリテーションと、脊髄のミクログリアにおけるCasの機能変容の関連を、損傷や運動後の期間とCasの発現変化をさらに詳細に評価することで明らかにする。また、細胞培養系を用いて、ミクログリアへのメカニカルストレス負荷がミクログリア活性に与える影響を明らかにする。メカニカルストレス負荷は、物性の異なる細胞培養基質上で培養する、培養液によるshear stress等、既存の複数の方法を用いる(Yip et al., Biophys J, 2013等)。 また、ミクログリア特異的Cas欠損マウスの作製は、ミクログリア特異的タモキシフェンCre 発現マウス(Cx3cr1-CreERT2 マウス)を購入し、既に保有しているCas flox マウスを交配することで、動物飼育施設が利用可能となり次第作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入を予定していた、ミクログリア特異的タモキシフェン誘導性Cre発現マウスの入手が困難な状況が生じ、本マウス購入に使用する予定であった金額を残した為。
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次年度使用額の使用計画 |
当初、初年度購入を予定していたミクログリア特異的タモキシフェン誘導性Cre発現マウスを、可能となり次第入手し、以降の検討を進めることとする。
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