研究課題
脊髄損傷後のニューロリハビリテーションの土台となる神経可塑性は、神経細胞自身の機能とともに、周囲のミクログリアの機能によっても制御されているため、ミクログリアによる可塑性制御メカニズムは治療ターゲットの一つとして考えられる。一方、細胞はメカニカルストレスを介してその機能を変化させるが、メカニカルストレスがミクログリアの機能に与える影響と、リハビリへの応用の可能性は明らかではない。Casは、メカノセンサーの1つと考えられており、伸展刺激(メカニカルストレスの1種)によりリン酸化を受けることが報告されている。このメカノセンサーCasの脊髄での発現をC57BL/6Jマウスを用いて免疫染色法により評価したところ、Iba1陽性ミクログリアにおいて、Casのリン酸化を認めた。さらに損傷42日後(慢性期)ではミクログリアにおいて顕著なCasのリン酸化を認め、ミクログリア活性に対するCasの寄与が示唆された。さらに細胞培養系として、ミクログリアと同種の細胞であるマクロファージでのメカニカルストレスの役割を検討した。安定的に培養可能な細胞として、腹腔マクロファージを用いて種々のメカニカルストレスを負荷したところ、Shearストレス負荷により、LPS誘発性の炎症反応の低下を示唆する所見を得た。申請者の所属変更に伴い、脊髄損傷モデルマウスを安定的に作成不能になり、脊髄損傷後に認められる骨格筋不動でのマクロファージにおけるCasの役割を検討した。その結果、マウスにおいて、不動化した骨格筋組織への規則的で反復的な刺激が、不動化により増悪したマクロファージの炎症反応を抑え、不動化に伴う筋萎縮に抑制的に働く可能性を報告した。これは、脊髄損傷により麻痺した骨格筋で認める萎縮にも応用可能となる可能性がある。
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Clin Sci (Lond).
巻: 132 ページ: 2147-2161.
10.1042/CS20180432