本研究は重度肢体不自由者における視線入力を用いた意思伝達支援装置の開発を目的としている.視線入力では直接入力方式を用いることが多く,50音の中から入力をしたい文字を一定時間注視することで,文字が選択される.50音をすべて表示すると選択項目が小さくなり,高い精度の視線入力が要求される.一方,符号化入力方式では長点もしくは短点のみとなり,選択項目を大きく表示することが可能である.しかし,符号化入力方式では符号を覚える必要があり,事前に学習や訓練する必要がある.そのため,直感的に利用することができず,直接入力方式が主流となっている. 符号化入力方式では,入力動作一回あたりの入力bit数を上げることができ,操作に十分慣れた重度肢体不自由者であれば,入力方式として有効な方式となる.また,表示項目を大きくすることが可能であり,入力成功率などの向上が考えられ,誤入力,誤操作を低減することが可能であると考える.そこで本研究は符号化入力を用いた視線入力の検討を行った. その結果,符号化入力方式は直接入力方式と比較し文字の入力速度は低下するが,項目選択の精度は高いことが確認された.また,入力項目が大きくなることで十分なキャリブレーションがなくとも利用できることが確認された.長点および短点の二つの符号を用いた符号化入力方式であるが,符号数を増やすことも可能である.視線の精度と選択項目の大きさに関連があり,今後検討を行う必要がある.
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