研究課題
本研究の目的は,社会問題となっている在宅酸素療法を必要とする特発性間質性肺炎患者の運動耐容能と身体活動の改善および生命予後を向上させるための「酸素療法を併用した呼吸リハビリテーションプログラム」を開発し、その効果を検証して、対象患者並びその家族の在宅および地域社会における生活の質(QOL)の向上をはかることであった.平成28年度は特発性間質性肺炎患者の運動時の低酸素血症が健康関連QOLに与える影響を検証した.特発性間質性肺炎患者に心肺運動負荷試験と肺機能,血液ガス,健康関連QOLを調査した.心肺運動負荷試験は呼気ガス分析装置を用いて,最低SpO2と最高酸素摂取量,嫌気性閾値代謝を測定し,肺機能は肺活量(VC)と肺拡散能(DLco),血液ガス分析でPaO2を測定し,健康関連QOLはSGRQ(St George’s Respiratory Questionnaire:SGRQ),息切れ評価はbaseline dyspnea index(BDI),筋力は呼気筋力,吸気筋力,膝進展筋力,握力を測定した.調査の結果,SpO2の最低値は平均89.8±5.7%で,90%以下だった者は全体の47.2%であった.SpO2の最低値と相関関係を認めたのは,SGRQの総合点と各項目点,BDI,最高酸素摂取量,嫌気性閾値代謝,VC,DLco,PaO2であった(p<0.05).SpO2の最低値と筋力の4つの測定値と相関関係を認めなかった.以上の結果より,特発性間質性肺炎患者は半数の人が運動時の著しい低酸素血症が存在し,低酸素血症の程度は健康関連QOLや息切れ,運動耐容能に強く影響していた.これは今後の研究課題である酸素療法が特発性間質性肺炎患者の運動耐容能や息切れ感に及ぼす短期効果を検証する上での重要な基礎データである.
2: おおむね順調に進展している
本年度は「特発性間質性肺炎患者の運動時の低酸素血症が健康関連QOLに与える影響の検証」を課題とし,本課題は予定通り達成したため概ね予定通り計画は進行している.
次年度は,酸素療法が特発性間質性肺炎患者の運動耐容能や息切れ感に及ぼす短期効果の研究を進めていき,対象者数の確保に努める.加えて,次年度の下半期では本研究課題の中間的報告として検証結果を提示する予定である.
対象患者のエントリーが順調に進み,対象の予定人数をクリアーできた為,データ測定の出張回数が予定より少なく済んだためである.
身体活動量計を購入するとともに,論文の執筆に着手できるように研究を進める.計画に従って予算を執行する.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
International Journal of COPD
巻: 22 ページ: 1543-1551
10.2147/COPD.S104947