研究課題/領域番号 |
16K16472
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
生野 公貴 畿央大学, 健康科学部, 研究員 (90722249)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能的電気刺激 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
脳卒中後生じる運動麻痺に対する代表的なリハビリテーション介入の一つに機能的電気刺激がある。これは,麻痺した筋肉を体表面からの電気刺激により人工的に筋収縮を誘発し,筋力増強や機能再建を図るものである。従来の機能的電気刺激は,過去の生理学的研究に基づき筋収縮を誘発しやすい刺激パラメーター(パルス幅300μs,周波数30-50Hz)で実施されるが,この刺激パラメーターでは強い筋収縮が得られる一方で同時に痛みや筋疲労も生じさせてしまうため,必ず休止時間を設ける,強度を調節するなどの配慮が必要となってしまうことが限界点として挙げられていた。我々は,この疲労の原因は電気刺激が一定の周波数により同一の運動単位の発火によるForce potentiationであるという仮説を立て,これを解決するために,確率共鳴現象の知見を援用し周波数をランダム化させるという着想に至った。このランダムパルス刺激は,神経の刺激を時間的にランダムに発火させることでより生理的に近い形で運動単位の動員がなされる可能性があり,運動単位の分散により疲労を軽減できる可能性がある。 今年度は,一定の刺激強度において従来の一定周波数と刺激パルス間隔をランダムに変調させる2種のランダムパルス刺激の3条件にて繰り返し刺激による筋疲労への影響および刺激時の痛みについて調査した。その結果,10回の連続した反復刺激において一定周波数の刺激は筋疲労により筋トルクの低下が観察されたが,ランダムパルス刺激は有意な亢疲労効果を認めた。また,一定周波数の刺激と比較してランダムパルス刺激は有意に刺激時の痛みが低かった。この結果は,第25回日本物理療法学会学術大会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者における予備実験は当初の計画よりもわずかに遅れているが,おおむね順調に経過している。平成29年3月に研究責任者の役職変更に伴い,平成30年度は当初予期していた当該研究に関するエフォートが変化する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度得られたランダムパルス刺激において,筋トルクでの疲労評価のみならず,より末梢の疲労を生理的かつ定量的に評価する近赤外線分光法NIRSによる評価および脊髄反射計測をもちいて,筋疲労の生理的メカニズムを中枢および末梢神経・筋レベルで評価し,ランダムパルス刺激の生理学的特性についてのエビデンスをより詳細に明らかにする予定である。 また,新たにパルス間隔のランダムだけではなく,刺激強度のランダム化にも着手し,ヒト本来の神経活動に近い形での刺激様式にてその生理学的効果を調査する。 さらに,それらのパラメータを用いて具体的なリハビリテーションでの臨床応用を患者研究にて実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた予算よりも安価に物品が調達できたため,また国際学会参加を見送ったため繰越金が発生した。 次年度には新たに研究で使用する物品(消耗品),および評価機器の充足にあて,学会発表および英論文校閲費に充てる予定である。
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