総務省の人口統計によれば高齢者人口は2010年で20%を越え,我が国は超高齢社会の現状にある.この高齢化により,高齢者が高齢者を介護する老老介護が深刻な問題となっている.そのため,QOL向上のための様々な支援技術が注目されている.本研究では車椅子に焦点をあて,車椅子の介助アシスト力の生成法の提案と実装を目的に,介助時のメカニズムの検証を行った. アシスト力の生成を検討するにあたり,介助者の車椅子操作の力覚情報は重要であるため,まずは車椅子操作のメカニズムを明らかにした.操作を定量的に解析するために,車椅子ハンドル部の一部を改良し,6軸力覚センサにより介助時の操作力と操作モーメントを取得した.その結果,市販の車椅子のハンドル形状および高さが総合的に操作しやすいことを明らかにした.次に介助者の操作性の向上を目的に介助動作を検証した.介助動作を把握するために,小型モーションセンサを下腿部に貼りつけ,人体を横から見た面における下腿部角度を取得した.車椅子を前進させている間は常に押し出し力が発生するが,取得した下腿部角度からの介助動作との関連性を確認した.具体的には,踵接地による床からの反力を利用し車椅子を前方に押し出していることを確認した.本検証より操作力の発生と介助動作の規則的な関係を適用することで介助動作に連動したアシスト力の生成が可能であることが示唆された. 最終年度は車椅子に実装し検証する予定であったが,モーションセンサからの運動情報に大きなドリフトが出てしまい,正確な動作情報を得るには難しく,その情報で適当なアシスト力を生成できなかった.そのため,ドリフトの補正方法の検討が必要になり,最終的な到達目標である実装および実機検証までは至らなかった.しかしながら,力覚情報と運動情報の規則性が明らかになったことで,新たなアシスト力の生成法への発展的展開が期待できるものとなった.
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