研究課題/領域番号 |
16K16477
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
大西 章也 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (20747969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ブレイン-マシン・インターフェイス / ブレイン-コンピュータ・インターフェイス / 脳波 / 情動 / 感情 |
研究実績の概要 |
ブレイン-マシン・インターフェイス(BMI)は脳波などの脳信号を計測し、解析することで装置の制御やコミュニケーションを可能とする装置である。BMIは主に脳波を用いるため、体が不自由な患者も操作できると期待されている。本研究では感情の一時的な変化である情動を含む音刺激を新たに導入したBMIの開発を行い、それがBMIや脳波に与える影響を調べた。 本研究では「はい」と「いいえ」それぞれに割り当てられた情動音を聞き、返事と対応する音を心の中で数えることで動作するBMIを開発した。ここで、正の情動音を「はい」に、また負の情動音を「いいえ」に割り当てた。それらがランダムな順序で聞こえてくるので、被験者は返事に対応する音が聞こえたときに心の中で出現回数を数えるといった課題を行った。そうした際の脳波を線形判別分析などにより解析し、被験者がどちらの返事をしようとしていたのかを推定した。また、情動の影響を調べるため、各情動音のかき混ぜ音を用いた実験を行い、正の情動音が呈示された場合と負の情動音が呈示された場合を分けて解析を行った。さらに情動の正負(100~-100)を視覚アナログスケール(VAS)により評価した。 健常者15名に対して実験を行い、正の情動音、正の情動かき混ぜ音、負の情動音、負の情動かき混ぜ音を用いた場合、BMIの平均識別精度はそれぞれ84.7%、67.3%、77.3%、76.0%であった。また、VASはそれぞれ58.5、-12.1、-50.0、-39.2であった。このとき、正の情動音と正のかき混ぜ音の間に識別精度およびVASの有意差が見られた。また、患者1名が90%の識別精度で上記のBMIを操作できることが確認できた。これらの結果は情動音がBMI識別精度向上に貢献することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者における情動BMIの評価を行い、正の情動音がBMIの識別精度を向上させることを示唆する結果がえられた。また、以上の識別にP300が貢献していることを示唆する結果が得られた。さらに、リアルタイム聴覚BMIを開発し、患者1名が装置を90%で操作可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
健常者実験において、負の情動音でVASの有意差が見られなかったため、刺激を変えるなどして情動音がBMIの識別精度や脳波に与える影響についてより詳細に検証する。
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