本研究では,日常生活中における足部の状態や歩行動作をモニタリングし,定量評価を行うことにより,足元の機能の観点から考える健康管理に関する仕組みの構築を目的とした.本研究において平成28年度に作製した歩行機能評価デバイスは,ワイヤレスな状態でヒトの歩行中の足底部荷重状況や足部の動作の計測ができ,無線通信によりデバイス制御用のコンピュータやタブレット型情報端末等のアプリケーションソフトウェアに取得データの伝送が可能な仕組みとして構築した.平成29年度は本デバイスを用いて健常者・高齢者を対象とした実験を行い,歩行データの取得を行った. 平成30年度はこれまでに実験室環境内で取得した歩行データと,地域在住の健常者・高齢者を対象としたフィールド実験における歩行データのそれぞれの関連性を分析し,被験者の身体機能の特徴ごとに評価点を抽出することで歩行データのパタン分類を行った.さらに,データの自動分析アルゴリズムの構築と,歩行機能評価システムへの実装を目指し,分析アルゴリズムを制御用ソフトウェアの機能に組み込むことで計測データのリアルタイムモニタリングおよび即時フィードバックが可能なようシステムの改良を行った.ここで用いた計測データの評価パラメータは,歩行動作時の足底最大圧力,足圧中心軌跡(COP:Center of Pressure),前足部・後足部の加速度・角速度,足部異常の有無の分類等である.その結果,外反母趾を有する対象者や過去1年間の転倒歴を持つ対象者等の足部・歩行特徴を定量化することができ,計測データの可視化につながる評価方法を確立することができた.加えて,歩行機能評価システム全体の評価のための検証実験を行った.本システムにより,定量的に対象者の足部・歩行状態を可視化することができ,具体的な数値として評価可能なことを確認した.
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